公示前の党首討論会で印象に残る場面があった。選択的夫婦別姓へ賛否を問うたところ、公明党を含め他党党首全員が肯定で挙手し、首相だけが手をあげなかったのである。リベラルから批判が相次いだが、これほど現在の政治を象徴する場面はない。いまの日本では自民党がすべてだ。国民の多くが望んだとしても、首相が拒否すればその政策は通らないのである。

 この状況が不健康であることは明らかである。そしてそれを改善するには強い野党を作るほかない。いまリベラル側の政治家と有権者に課せられているのは、そのような長期的な課題である。そしてそのためにはポピュリズムの誘惑に負けてはならない。かつて小池百合子の登場に幻惑されて、約20年の歴史をもつ野党を解体してしまった、あの過ちを繰り返してはならないのである。

 国民の審判はどう出ただろうか

AERA 2019年7月29日号

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東浩紀

東浩紀

東浩紀(あずま・ひろき)/1971年、東京都生まれ。批評家・作家。株式会社ゲンロン取締役。東京大学大学院博士課程修了。専門は現代思想、表象文化論、情報社会論。93年に批評家としてデビュー、東京工業大学特任教授、早稲田大学教授など歴任のうえ現職。著書に『動物化するポストモダン』『一般意志2・0』『観光客の哲学』など多数

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