企業主導型保育所「こどもの杜上北沢駅前保育園」は昨年11月、突然休園し、通っていた親子が混乱に陥った(撮影/ライター・大川えみる)
企業主導型保育所「こどもの杜上北沢駅前保育園」は昨年11月、突然休園し、通っていた親子が混乱に陥った(撮影/ライター・大川えみる)
工事費平均とのギャップ(AERA 2019年5月27日号より)
工事費平均とのギャップ(AERA 2019年5月27日号より)

 保育所の内装工事費を水増しして申請し、合計で約8千万円の補助金を不正に受け取ったとして、企業主導型保育所の運営者ら3人が5月28日、補助金適正化法違反(不正受給)容疑で逮捕された。5月20日発売のAERA5月27日号で、相場をはるかに上回る金額で工事費を申請していた実態を報じた合同会社「ANELA(アネラ)」の元代表・坂口真美(48)、ANELAの元コンサルタントで「こどもの杜」代表・和田勝海(48)、内装工事を請け負った牛渡(うしわたり)満(44)の3容疑者だ。

【図表】工事費平均の相場をはるかに上回っていた

 愛媛県警など4県警の合同捜査本部によると、3人は2016年8月から11月、ANELAが運営する東京都杉並区と目黒区の2カ所の保育所の内装工事費を水増しして計約1億8750万円と申請。公益財団法人「児童育成協会」の審査を経て、16年12月と17年3月に合わせて1億4700万円の助成を受け、工事にかかった実費との差額として総額約8千万円の補助金を不正に受け取った疑いがある。

 実際には、これを上回る金額を不正に受け取ったと見られている。

 記者が独自に入手した資料によると、ANELAのコンサルタントを務めていた和田容疑者は16年夏、牛渡容疑者が当時勤めていた建設会社に、こう働きかけていた。

「工事代金をできるだけ高く請求して頂きたい。総額1億円以下であれば助成が下りる。いくらでもいい」

 和田容疑者は、ANELAが運営する保育所のうち、都内の5園の内装工事の契約をこの建設会社と締結。計4億6千万円超の改修費を児童育成協会に申請し、工事費の4分の3にあたる3億5千万円以上の補助金がANELAに支払われた。

 工事にかかった実費を除いた補助金は、どこに行ったのか。

 ANELAの元代表、坂口容疑者は愛媛県の健康食品販売会社「オハナ生活倶楽部」の元経理担当者でもあった。オハナは15億円以上の資金を高齢者から違法に集め、18年9月に破産申請をしている。不正に受け取ったとされる保育所の補助金は、資金繰りが厳しいオハナに流れた疑いが持たれている。

 多額な補助金を得ていたにもかかわらず、ANELAが運営する保育所では職員の給与や社会保険料が支払われず、年金事務所から差し押さえ通告まで受けた。ANELAの元職員は言う。

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元職員の証言