「保育士の給与未払いで休園騒動になり、保育士らが泣きながら坂口に詰め寄ったが、まともな謝罪もなかった」

 昨年12月1日、ANELAが運営していた計7園は、別の事業者に譲渡された。

 さらに和田容疑者は、こどもの杜代表として17年から自らも企業主導型保育所を運営していた。東京都世田谷区の247平方メートルの「こどもの杜上北沢駅前保育園」では、内装工事費として約8783万円を計上。工事費の4分の3にあたる6618万円が助成された。この園を含め、計4園でも請求額が水増しされた可能性がある。このほか、東京都練馬区で計画していた保育所は、土地の利用が困難になり、開園に至らなかったにもかかわらず、3千万円超の補助金はまだ返還されていない。

 和田容疑者は受け取った補助金について、周囲に「イギリスの家族の銀行口座に誤って送金してしまった」と説明しているといい、その額は数千万円にのぼるとされる。

 ANELA同様、こどもの杜でも昨年11月、前述の上北沢駅前保育園で、保育士が給与未払いから一斉退職し、突然休園する騒動が起きた。同じ世田谷区内にあった姉妹園の「下高井戸駅前保育園」も給与の遅配があり、子どもを預けていた保護者によると、0歳児8人を1人の保育士がみるような無理な態勢も見られたという。現在、上北沢駅前保育園は休止、下高井戸駅前保育園は、別の事業者に譲渡され、運営を再開している。

 こうした補助金の不正受給は、審査が適切に行われていれば、防ぐことができた。

 前述の資料によると、17年12月、牛渡容疑者が勤めていた建設会社は弁護士を通し、ANELAの補助金申請が不当か否かについて児童育成協会に照会、調査を求めていた。同社はANELAから通常より高額な金額で工事を請け負い、いったん工事代金は支払われたものの返還を求められ、最終的に受け取っていない状況だったという。

 運営の状況を精査すべき局面にもかかわらず、協会は直後にANELAの2園の新たな開園計画を承認し、1億円を上回る補助金の支給を決定した。さらに、そのなかから、ANELAが滞納した従業員らの社会保険料約3千万円が、協会から年金事務所に支払われたという。

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