稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。著書に『寂しい生活』『魂の退社』(いずれも東洋経済新報社)など。『もうレシピ本はいらない 人生を救う最強の食卓』(マガジンハウス)も刊行
稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。著書に『寂しい生活』『魂の退社』(いずれも東洋経済新報社)など。『もうレシピ本はいらない 人生を救う最強の食卓』(マガジンハウス)も刊行
万博開催が決まり喜ぶ松井一郎大阪府知事(右から2人目)ら=2018年11月23日、パリ(写真:代表撮影)
万博開催が決まり喜ぶ松井一郎大阪府知事(右から2人目)ら=2018年11月23日、パリ(写真:代表撮影)

 元朝日新聞記者でアフロヘア-がトレードマークの稲垣えみ子さんが「AERA」で連載する「アフロ画報」をお届けします。50歳を過ぎ、思い切って早期退職。新たな生活へと飛び出した日々に起こる出来事から、人とのふれあい、思い出などをつづります。

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 大阪万博。先週のアエラで内田樹さんが、反対を表明する人の少なさについて書いておられたので、エッそうなのと驚き、ならば不肖私も書いておこうと思いました。

 東京五輪に続いて大阪万博……って、つまりは「高度経済成長アゲイン」ってことですよね。夢よもう一度と。開催決定を喜ぶ政治家や企業経営者の方々を見て、なるほど皆様が目指す日本の明るい将来ビジョンは結局そこしかないんだなと。大量生産大量消費カムバーックと。

 でもモノをガンガン作ればガンガン売れて、会社員の給料も上がり、ゆえにまたモノが売れてみんなが豊かになって……っていう当時の黄金の方程式が成り立たないからこその現状じゃないんでしょうか。モノが売れないのはデフレとやらのせいじゃない。みんなもう欲しいものはそんなにないんです。なのにどうにか売り続けなきゃすべてが回らないというビジネスモデルを変えられないから、あちこちで無理が限界に達している。それでもその方程式にしがみつく以外の解決法をエラい人たちは思いつけないのだな。

 いま多くの人が切実に欲しがっているのは、モノより安心です。年を取っても、お金がそんなになくても、そこそこ幸せに満足して死んでいける人生。それが手に入りそうにないから、みんなひたすら金を貯めて備えている。

 つまり、今まず必要なのは、お金に頼らなくてもいい、人同士の信頼関係なんじゃないでしょうか。例えばご近所の助け合い。お互い様文化の復活。そう思うと、大金を注ぎ込んで万博なんぞやらんでも大阪には大きな財産があるじゃないですか。それは……大阪のおばちゃん! 絶えず人にアメを配ることで知られる彼女たちはコミュニケーション力の塊であり、あれほどおせっかいをさらりとやってのける人たちは見たことがありません。私なら大阪のおばちゃんの世界遺産登録を目指すね。世界からおばちゃん見たさに人が押し寄せ、おばちゃんパワーはますます活性化し、助け合い文化の復活につながるかと思います!

AERA 2018年12月17日号

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稲垣えみ子

稲垣えみ子

稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行

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