小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『歳を取るのも悪くない』(養老孟司氏との共著、中公新書ラクレ)、『幸せな結婚』(新潮社)
小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『歳を取るのも悪くない』(養老孟司氏との共著、中公新書ラクレ)、『幸せな結婚』(新潮社)
「#WeToo Japan」スタート記念イベントでは、登壇者が自身の「宣言」を掲げた (c)朝日新聞社
「#WeToo Japan」スタート記念イベントでは、登壇者が自身の「宣言」を掲げた (c)朝日新聞社

 タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。

【「#WeToo Japan」スタート記念イベントでは、登壇者が自身の「宣言」を掲げた】

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 かつて、労働時間削減の先進的な取り組みをしている企業はそれをなかなか公表できなかったそうです。公表すると「長時間労働があるなんてけしからん!」とたたかれてしまうから。一方でなんの取り組みもしていない企業は、見かけ上は「問題なし」。皮肉なことですよね。

 実はハラスメント対策でも同じようなことが起きているのだそうです。進んで対策をした企業が「あの会社はハラスメントがある」と評判を下げてしまう。黙っていては現状は変わらず、声を上げるとたたかれるというジレンマです。

 それを変えようという取り組みを、このほど仲間たちと立ち上げました。「ゼロハラ宣言プロジェクト」です。企業や自治体、大学などの組織のトップに「うちはハラスメントをゼロにする取り組みを進めます!」と宣言してもらい、ポジティブな空気を広げるプロジェクトです。

 あらゆるハラスメントにNOを言おうと今年3月に立ち上がった#WeTooJapanという活動に賛同した仲間たちの中から有志で立ち上げたこの「ゼロハラ宣言プロジェクト」。宣言だけでなく、ネット上やストリートでのハラスメントの実態調査や、ハラスメントに関する思い込みの調査、性的合意に関する意識の調査も行います。基礎知識や相談窓口などの情報をまとめて#WeTooのwebサイトに掲載しました。ぜひ一度検索してみて下さい。

 このプロジェクトの目的は、ハラスメントはもうやめよう、という空気を作ること。あってはならないから「ない」ことにするのではなく「変えよう」と安心して言えるようにすることです。

 全てのハラスメントは繋がっています。痛みに耐えてこそ!なんて美学は誰も幸せにしませんよね。

 組織だけでなく個人も、無知ゆえに過去にハラスメントの傍観者や加害者だったことがあるかもしれません。私にも思い当たる節があります。反省を込めて「もうやめよう」を気軽にシェアできるようにしたいです。

週刊朝日  2018年12月3日号

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小島慶子

小島慶子

小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。共著『足をどかしてくれませんか。』が発売中

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