外国人労働者に関する野党合同ヒアリングで思いを述べ、涙を拭う技能実習生(右端)ら=11月8日、国会内 (c)朝日新聞社
外国人労働者に関する野党合同ヒアリングで思いを述べ、涙を拭う技能実習生(右端)ら=11月8日、国会内 (c)朝日新聞社
ベトナムの送り出し機関が日本の監理団体などに送った内部文書。「実習生が逃げる防止コミットメント 1年目 25万円/1実習生」「(企業が行う)ベトナム面接の際に旅行、観光、食事等の費用は弊社負担」などと書かれている(撮影/写真部・小黒冴夏)
ベトナムの送り出し機関が日本の監理団体などに送った内部文書。「実習生が逃げる防止コミットメント 1年目 25万円/1実習生」「(企業が行う)ベトナム面接の際に旅行、観光、食事等の費用は弊社負担」などと書かれている(撮影/写真部・小黒冴夏)
技能実習生が背負う「手数料」の実態は…(AERA 2018年11月26日号より)
技能実習生が背負う「手数料」の実態は…(AERA 2018年11月26日号より)

 労働力確保のため、外国人労働者の拡大を検討する日本。しかし現在、国内では技能実習生の「失踪」が過去最多となっている。実習生を失踪にかりたてるものは何なのか。

【写真】ベトナムの送り出し機関が日本の監理団体などに送った内部文書はこちら

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「ベトナムに、両親と住む家を建てたい。最低200万円貯金できるまでは、帰りたくない」

 そう話すベトナム人男性は、関東地方で働く技能実習生だ。建設業の技能実習に来て3年目。3年間の在留資格が切れる直前で職場から「失踪」し、国内で不法在留を続けることを考えているという。

 名前や年齢、勤務先などの個人情報を伏せることを条件に、記者の取材に応じてくれた。ここではAさんとする。

 Aさんはベトナム北部の田舎町の出身。若者の多くは台湾や韓国、日本に働きに出ているという。Aさんも100万円以上をベトナムの「送り出し機関」に払い、技能実習生として2016年夏に日本にやって来た。

「2割程度は親戚から、残りは銀行で借りました。日本の在留資格証明書があれば、銀行はお金を貸してくれます」

 雇用契約書には手取り9万円とあった。送り出し機関を紹介してくれたブローカーは言った。

「残業もあるし、3年間で最低300万くらいは貯金できる」

 だが実際には残業はなく、働いた日しか給料が発生しない日給月給制だった。贅沢はできない。住居費を除く生活費は最大月3万円に抑え、最低6万円は借金返済のため貯金する。外食は3カ月に1回程度。前回は友人と焼き肉の食べ放題に行き、3千円ほど使った。

 それでも2年が経った今、貯金はゼロだ。背負った借金を返しただけ。あと1年働いても、目標とした300万円の貯金は難しい。このままでは帰れない──。そんな思いが、Aさんを「失踪」へと誘う。

 外国人労働者の受け入れ拡大を目指す出入国管理法改正案の審議が始まった。新設される在留資格「特定技能1号」の大半は技能実習生が移行すると見込まれる。ただ、18年上半期に失踪した実習生が4279人と過去最多だったことがわかっており、野党は現行の実習制度の検証が先だと追及を強めている。

 山下貴司法相は7日の参院予算委員会で実習生の失踪理由を問われ、「現状の賃金等への不満からより高い賃金を求めて失踪する者が87%」と、法務省による調査結果の一部を公表した。

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