稲垣えみ子「北海道の美流渡で知った『なんとかなる』の精神の力強さ」 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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稲垣えみ子「北海道の美流渡で知った『なんとかなる』の精神の力強さ」

連載「アフロ画報」

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稲垣えみ子AERA#稲垣えみ子
稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。著書に『寂しい生活』『魂の退社』(いずれも東洋経済新報社)など。『もうレシピ本はいらない 人生を救う最強の食卓』(マガジンハウス)も刊行

稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。著書に『寂しい生活』『魂の退社』(いずれも東洋経済新報社)など。『もうレシピ本はいらない 人生を救う最強の食卓』(マガジンハウス)も刊行

美流渡へと導いてくれた友人家族。ブルドーザーのごとく道なき道を進む爽やかさといったら!

美流渡へと導いてくれた友人家族。ブルドーザーのごとく道なき道を進む爽やかさといったら!

 元朝日新聞記者でアフロヘア-がトレードマークの稲垣えみ子さんが「AERA」で連載する「アフロ画報」をお届けします。50歳を過ぎ、思い切って早期退職。新たな生活へと飛び出した日々に起こる出来事から、人とのふれあい、思い出などをつづります。

*  *  *
 北海道の美流渡というところに行ってきました。仕事で出会った女性に「北海道に移住したんです」「山も買っちゃいました!」と言われ、エッ、山買って何するのと聞いたら「何もしません!」。思わず2人で笑い、不思議のあまり思わず現地へノコノコと。

 札幌から列車で40分、さらに車で20分、炭鉱で栄えた町ですが、今は広大な自然の中で空き家がそこかしこで朽ちていくばかり。そんな中、編集者の彼女はかつての炭鉱住宅を買い、大工さんの夫がコツコツ修理しながら家族5人で暮らしていました。仕事はウェブでやり取り。「はじっこからの発信」を目指して小さな出版社も立ち上げたところです。山は驚くほど安く、「勢いだけで買いました」。どうするかはこれから考える。いや、規格外だなあ。

 紹介してもらった他の移住者たちもすごかった。みな細~い縁でここへたどり着き、ユーチューブ見て家建てたとか、森を開墾して農作物育ててますとか、仕事も、週末だけ開ける5席のカフェとか、シェアハウスとか、花屋とか……いや言っちゃあなんですがこんな場所でですよ! 自由すぎるよ! ロールモデルなんてありゃしない。それでも道なき道を平然と、面白そうに歩み続けている。これは一体なんなんでしょう。

 収入とか安定とか、「常識的」には常時危機なんでしょうが、みんな全くのんびりしている。「なんとかなる」と思ってるっぽい。っていうか、なんともならなくてもなんとかなると思っているフシがある。例えば、独学で古家をコツコツ修理している20代女子。見に行ったら思った以上に大掛かりでまだ骨組みだらけ。完成までの道のりを思って気が遠くなる私に、当の本人は、冬が寒くて作業が進まないんですエヘヘと眉根を寄せて見せた。なんだめちゃくちゃ楽しんでるじゃん!

 なるほど、ここでは誰もゴールを目指していないんだな。っていうかそもそもゴール設定をしていない。瞬間を楽しむのみ。確かにそう考えれば成功も失敗もない。人はここまで強くなれるのである。

AERA 2018年10月22日号


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稲垣えみ子

稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行

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