中村龍太(なかむら・りゅうた)/1964年広島県生まれ。NEC、日本マイクロソフトに勤務後独立。現在は「サイボウズ」「NKアグリ」「コラボワーク」を掛け持ち(撮影/古川雅子)
中村龍太(なかむら・りゅうた)/1964年広島県生まれ。NEC、日本マイクロソフトに勤務後独立。現在は「サイボウズ」「NKアグリ」「コラボワーク」を掛け持ち(撮影/古川雅子)

 求人が多いのは東京都心などの都会だが、一方で地方の仕事には地方ならではの魅力も。「3社掛け持ち」という働き方を実践する中村龍太さんに話を聞いた。

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テクノロジーが進化し、働き方自体が変わっていく時代。「働く」にひもづく「住まう」形も当然変わっていく。

 僕が農業とIoTの掛け合わせの事業に取り組めるのは、遠隔で仕事ができる時代ならでは。圃場(ほじょう)があるのは千葉、家の目の前ですが、本社は和歌山県。週4日社員として勤める「サイボウズ」(東京都中央区)のクラウドサービスを導入しており、ニンジン作りがサイボウズの製品の宣伝にもなる。僕の仕事は、東京、千葉、和歌山がある意味混然一体となっています。

 例えば、知人で千葉県南房総市に完全移住した永森昌志さん(41)は、南房総と東京都心で仕事をする2拠点ワーカーですが、複数の拠点で働き、需要に応じて東京と地方の仕事のウェートを変えていく永森さんのようなスタイルは、今後増えていくでしょう。千葉への移住者同士である私と彼は、パエリアのコラボ事業を進めています。知り合いの移住者が税理士と養鶏業を両立していて、「里山でパエリアをおいしく炊ける米を栽培して」と頼んだら、快く引き受けてくれた。永森さんというクリエーターが加わり、皆で面白いコトを起こしていけそうです。僕が去年始めた「コラボワーク」は、こうした「好きなこと」「できること」を実現する「スキデキ業」の会社なんです。

 これからも、働いた対価収入としての「お金」は当分、「東京」が象徴するような効率主義、大きな産業にひもづくでしょう。でも、傍(はた)を楽にしてありがとうと言われる「はたらく」は、人のつながりをつけやすい地方の方がやりやすい。「働く」と「はたらく」の組み合わせを考える人が住まう場所は、「スキデキ」にひもづいていくことになるでしょう。

(聞き手・古川雅子)

AERA 2018年10月8日号