アラフォー就職氷河期世代を「自己責任」と言えない“構造的不遇”とは? 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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アラフォー就職氷河期世代を「自己責任」と言えない“構造的不遇”とは?

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深澤友紀AERA#働き方
20年前、1998年の就職活動。就職氷河期世代は団塊ジュニア、ポスト団塊ジュニアでもある。大勢のライバルと過酷な受験戦争を戦い、就職活動でも50社、100社と回った人も少なくない (c)朝日新聞社

20年前、1998年の就職活動。就職氷河期世代は団塊ジュニア、ポスト団塊ジュニアでもある。大勢のライバルと過酷な受験戦争を戦い、就職活動でも50社、100社と回った人も少なくない (c)朝日新聞社

アラフォー世代の「失われた20年」(AERA 2018年10月1日号より)

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アラフォーの未婚率は過去より高い(AERA 2018年10月1日号より)

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新卒時に非正規という人は年々増加(AERA 2018年10月1日号より)

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 就職につまずき、リーマン・ショックや派遣切りなど受難の道を歩いてきた。その就職氷河期世代が、アラフォーを迎えている。「失われた世代」とも呼ばれる彼らが直面する現実は──。

【図表で見る】アラフォー世代の「失われた20年」

*  *  *
 9月上旬の朝。都内に住む契約社員の男性(40)がいつものように通勤電車の中でツイッターを流し読みしていると、誰かがリツイートした「70歳雇用 努力目標に」という日本経済新聞の記事が目に飛び込んできた。途中まで読んでいたら、怒りがこみ上げた。

「それより、俺ら就職氷河期世代をどうにかしてよ」

 2001年に大学を卒業後、ほぼ非正規で働き続けてきた。数カ月や1年単位の契約を繰り返すため、常に“クビ”の不安がつきまとい、上司に嫌われないよう振る舞うだけで疲れ果てる。

 先日、頼まれたデータを処理して上司の席に持っていくと、パソコンの画面にはカードゲームの「ソリティア」が。正社員はいいですね、という嫌みがのどまで出かかったがぐっとのみ込んだ。自分の3倍は給与をもらっているはずの上司が仕事をさぼり、休憩時間も削って働く俺が労働契約法改正の影響で9月末に5年間の更新上限による雇い止めに遭う理不尽──。40歳を迎え、正社員になることはあきらめモードで、将来に絶望しかない。

 就職氷河期世代とは、バブル崩壊後、日本の景気が極度に悪化した1990年代半ばから00年代前半に社会に出た、現在40歳前後の世代のことだ。象徴的な出来事として、97年に山一證券が自主廃業。これらを機に一気に企業は新卒採用を絞った。学校基本調査によると、90年には80%以上もあった大卒の就職率は03年に過去最低の55.1%を記録した。

 この世代の厳しい雇用の実態を先駆的に取材してきた労働経済ジャーナリストの小林美希さん(42)は言う。

「当時、フリーターという言葉が広まり、非正規雇用に『自己責任論』が押し付けられた。でも、取材をしてみると背景に構造的な要因が横たわっていました」

 バブル経済崩壊後、企業はこぞって人件費を削減し、収益を確保した。それを後押しした一つが95年に日経連(その後「経団連」と統合)が発表した「新時代の日本的経営」だ。終身雇用や年功的定期昇給といった日本型雇用を見直し、正社員と非正規社員を組み合わせるという提言だ。99年には労働者派遣法が大きく規制緩和され、さらに非正規化が進んだ。

 とはいえ日本の労働市場が完全に自由化されたわけではない。「新卒一括採用」を前提としているため、社会人のスタートでつまずくと、その後も挽回ができず、不遇が続くのが日本の特徴だ。

 厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、10年から15年にかけて、大卒・院卒者全世代のなかで、35~44歳のアラフォー世代だけ賃金額(月収)が下がっている。各世代が2200~2万1100円増加しているのに対して、35~39歳は4300円、40~44歳は2万3300円も減少している。この世代に非正規雇用や転職を重ねた人が多いことや、正社員も、大量採用したバブル世代が上にいるため昇格・昇給しにくいことが要因だとされる。

 さらに最近では、この世代が40代を迎え新たな問題もクローズアップされている。「7040問題」だ。これまでは、この世代の不安定さを親が支えることで問題が見えにくかった面があるが、親たちも70代を迎え介護が必要になる人も増えてきて、生計を支えられずに親子共倒れが心配される。

 アラフォー世代にのしかかる“構造的不遇”。この問題をたまたま不運だったと切り捨てるなら、今後社会が大きなツケを払うことになるのだ。

 総合研究開発機構が08年に発表した研究報告書「就職氷河期世代のきわどさ」は、就職氷河期世代がこのまま高齢化すれば生活保護に必要となる追加支出が約20兆円程度と試算している。(編集部・深澤友紀)

AERA 2018年10月1日号より抜粋


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