もう一つ、今注目されているキーワードが「エンゲージメント」だ。ひと言で表すなら組織への「思い入れ」「愛着」だが、「忠誠心」とは異なり、組織と個人が結び付きを強めつつ、お互いの成長に貢献し合う状態を指す。多様な価値観や雇用形態が混在する組織では、「エンゲージメント」を高められるリーダーが求められているというわけだ。

「サーバント型とエンゲージメント型。このタイプのリーダーになり得る人材は比較的豊富です。しかし、それ以上に必要とされ、圧倒的に不足しているのが『変革』と『新たな価値創造』ができるリーダーです」

 こう語るのは、総合商社やメーカーなど日本を代表する企業の組織改革を手がける経営・組織コンサルタントで、エッグフォワード社長の徳谷智史さん。多くの企業は「変革」に迫られており、「働き方改革」の推進や、既存のビジネスモデルの見直しが必須。競合はもはや同業他社に限らない。トヨタであれば日産ではなくグーグルを相手にしなければならない。人口減で国内市場が縮小する中、海外市場にも目を向ける必要がある。

「これまでの勝ちパターンに縛られ、そのモデルにもとづく組織構成や人材育成を続けていると、いずれは機能しなくなる」(徳谷さん)

 だからこそ、森本さんと徳谷さんはこう口を揃える。

「現状を分析できる人は多いが、『否定』できる人は少ない。過去の成功体験の再現でもなく、現在の延長線上の施策でもなく、思い切ったパラダイムシフトを主導して、ゼロから1を生み出せる『イノベーション型』のリーダーが求められている」

(ライター・青木典子)

AERA 2018年5月21日号より抜粋