加計学園の「首相案件」文書で、主役のひとりは当時首相秘書官の柳瀬唯夫氏。「将来の次官候補」まで順調に出世を重ねた半面、厳しい評価もある。
柳瀬唯夫首相秘書官(当時)は2015年4月、愛媛県や今治市の職員、加計学園幹部らと面会したのか、しなかったのか。
●原子力政策で功績あり
愛媛県の中村時広知事が「職員が作成した」と認めた文書では、柳瀬氏が面会の際に「本件は、首相案件」と述べたとされる。柳瀬氏が「獣医師会には、直接対決を避けるよう、既存の獣医大学との差別化を図った特徴を出すことや卒後の見通しなどを明らかにするとともに、自治体等が熱意を見せて仕方がないと思わせるようにするのがいい」などとアドバイスしたことも文書に記されていた。
ただ、柳瀬氏は「記憶の限りでは、愛媛県や今治市の方にお会いしたことはない」と否定した。野党側はいっせいに反発し、柳瀬氏らの証人喚問を要求している。
「柳瀬秘書官の発言を私は信頼している」
安倍晋三首相は、柳瀬氏が県職員らに会った記憶はないという発言を支持する。安倍首相から全幅の信頼を受ける柳瀬氏とはいったい、どういう人物なのか。
柳瀬氏は1984年に東京大学法学部を卒業し、通商産業省(現経済産業省)に入省。資源エネルギー庁原子力政策課長、麻生太郎元首相の秘書官、安倍晋三首相秘書官、経済産業政策局長などを歴任し、現在は経産省で上から2番目のポストに当たる経済産業審議官だ。
永田町関係者は言う。
「経産省の出世コースであるエネ庁の原子力政策で功績をあげ、『次官待ちポスト』と言われる経済産業政策局長にも就任。将来の次官候補でもあった」
●「合コンの法則と同じ」
その半面、経産省OBの評価は手厳しい。柳瀬氏を「典型的な東大法学部を出た人」と称する。
「通産省、経産省という役所は、ほかの省庁と違って、言われたことをやる人材よりも、新しいことを生み出す人材が評価される。その点、柳瀬は言われたことはできるが、国家論や政策を聞いたことがない」
別の経産省OBの評価はさらに辛口だ。