記者会見で頭を下げるコインチェックの和田社長(左)ら。金融庁は業務改善命令に続き、2月2日には立ち入り検査に入った  (c)朝日新聞社
記者会見で頭を下げるコインチェックの和田社長(左)ら。金融庁は業務改善命令に続き、2月2日には立ち入り検査に入った (c)朝日新聞社
仮想通貨を支えるのは、インターネット以来の革命的技術とも言われるブロックチェーン(※2)だ。不特定多数の利用者が直接つながり、取引記録を共有することで信頼性を担保できるため、中央銀行のような管理者(※1)を置く必要がなくなる(AERA 2018年2月12日号より)
仮想通貨を支えるのは、インターネット以来の革命的技術とも言われるブロックチェーン(※2)だ。不特定多数の利用者が直接つながり、取引記録を共有することで信頼性を担保できるため、中央銀行のような管理者(※1)を置く必要がなくなる(AERA 2018年2月12日号より)

 仮想通貨取引所「コインチェック」(東京)から巨額の仮想通貨NEM(ネム)が不正流出した。仮想通貨イメージそのものにも大きく影響を与えたこの事件、問題点はどこにあったのか。

【図】そもそも仮想通貨とは

 被害総額と、フィット感のないダークスーツ姿とのミスマッチが甚だしすぎる。27歳の和田晃一良(こういちろう)社長が率いる大手仮想通貨取引所「コインチェック」がハッキングによって時価総額580億円相当の仮想通貨「NEM」を盗まれたニュースは世界を駆け巡り、下落基調だった相場をさらに冷やした。しかし、同社のセキュリティーの甘さとは裏腹に、仮想通貨を支えるブロックチェーン技術の信頼性が知られるきっかけにもなったようだ。ここで見えてきたのは、米ロを中心とした次世代基軸通貨を巡る覇権争いだった。

 埼玉県内の私立高校から東京工業大学に進学した経緯を、和田社長は自らのツイッターにこう綴っている。

「高校生のときは数学物理化学がめちゃくちゃ好きで常に勉強してました! その結果センター試験無しで数学の入試だけで東工大に入りました」

 小学生時代から興味があったプログラミングの技術を伸ばし、大学在学中にはアプリ開発を手がけ、知人に誘われ大学を休学して「レジュプレス」を設立、体験投稿サイトを立ち上げた。ここで、のちに「ビリギャル」の題名で映画化された話などを書籍化して軌道に乗せ、2014年8月に仮想通貨取引業に乗り出し、昨年3月に社名を「コインチェック」に変更して急成長した。しかし、金融庁が昨年4月から始めた取引所登録制度で、同社の申請は認められなかった。「みなし業者」のまま、前代未聞の事件の当事者になったのだ。

 仮想通貨を支えるのは、インターネット以来の革命的技術とも言われるブロックチェーンだ。不特定多数の利用者が直接つながり、取引記録を共有することで信頼性を担保できるため、中央銀行のような管理者を置く必要がなくなる。ブロックチェーン推進協会の平野洋一郎代表理事はこう指摘する。

「ブロックチェーンの取引履歴は誰もが見ることができ、流出したNEMの動きも把握できている。流出の原因はひとえにコインチェックの管理体制にある」

 どこに問題があったのか。『アフター・ビットコイン』などの著書がある麗澤大学経済学部の中島真志教授はこう解説する。

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