平昌五輪は、2月9日に男女シングル、ペア、アイスダンスの4種目の合計ポイントで順位を争う国別対抗の団体戦の男子ショートプログラム(SP)、12日に団体戦の男子フリースケーティング(FS)があり、男子シングルは16日にSP、17日にFSがある。団体戦に出れば、会場の雰囲気も感じられるし、足慣らしとしては最適だ。

 しかし日程が近すぎるため、団体戦にピークが合うと、重要な男子シングルで調子が落ちることもある。ピークを後者に合わせるためにどの試合に出場するべきなのか。羽生はタッグを組んで6年目となるブライアン・オーサーコーチと検討することになる。日本スケート連盟は、羽生の連覇をサポートする意味でも、団体戦への参加・不参加は羽生側の要望を尊重するという。

 宇野は、五輪金メダルを目指すなら作戦の見直しが必要だろう。

 16年、17年と羽生不在の全日本選手権を連覇。しかしその内容はお世辞にもほめられるものではなかった。王者不在の緊張感のなさか追われる身の難しさか、ミスを連発。17年全日本選手権の得点は、自己ベストを36点以上も下回る283.30だった。

「悔しい気持ちが強くて、五輪代表に選ばれても、試合のことをひきずっていました。あまりにもグランプリファイナルと全日本選手権と、(ミスの多い試合が)立て続け過ぎること。とりあえず、自分のいい演技をしないと話にならない」(宇野)

 五輪代表決定にも笑顔はなかった。

 4種類の4回転を持っており、今季はFSで「4種類5本」の4回転に挑んできたが、パーフェクトの演技はない。試合ごとにミスするジャンプの種類が違い、課題や反省点を模索する状態が続いている。そこで宇野は全日本選手権後、平昌五輪では、FSは「3種類4本」にすると発表した。

「昨季の世界選手権と同じ構成になるけれど、それを身体に染み込ませるところからやり直したいです。自分で考えて先生に話したら、先生も同じような意見でした」(同)

 現在の採点方式では、無理に4回転を跳んでミスするよりもミスなく演技全体をまとめることが評価される。4回転は3種類に抑え安定性を高めることが、勝利の方程式になる。宇野は、

「今はまだ自分に勝てていない状態。五輪まで50日。コレと決めたジャンプ構成で50日を過ごしてみたらどうなるか、精いっぱい努力していきたい」

 男子3枠目をつかんだ田中刑事(23)も2種類の4回転を跳ぶ逸材だ。全日本選手権では、国内記録ながら267.15と好スコアをマークし、五輪でもトップグループに肉薄できる位置にいる。本人も思いを強くしている。

「17年四大陸選手権で平昌五輪の会場で滑りましたが、力を出せず悔しい思いしか残っていません。リベンジの気持ちをあのリンクにぶつけたいです」

(ライター・野口美恵)

AERA 2018年1月15日号より抜粋