2015年1月1日施行の税制改正によって、相続税の基礎控除額が引き下げられ、逆に最高税率は引き上げられた。法定相続人が3人の場合、これまでは8千万円だった基礎控除額が、4800万円まで下げられた。改正前は8千万円以下の遺産には相続税がかからなかったのに、改正後は4800万円を超えれば、相続税が発生するようになったということを意味する。

 専門家によると、これは地価の高い地域なら一戸建てやマンションなどの不動産を所有し、さらに預貯金などの金融資産が多少あれば、相続税が発生する可能性が出てくるという相場観なのだという。これによって相続税の納税義務がある人が一気に増えたのは間違いない。

 また、改正前は50%だった最高税率が55%となるなど、税率は上がった。これまでは金持ちが対象の税という印象が強かった相続税が、一般のサラリーマン家庭も課税対象になりうる「大衆の税」の傾向を強めたことは、ぜひ知っておきたい。

 さまざまなことが法律で細かく、詳しく決まっている相続だからこそ、その仕組みや準備方法を知っているのと知らないのとでは大きな差がつく。一歩間違えば、故人の遺産を家族で奪い合うような「憎しみの財産」にもなる危険性がある相続財産。できることなら、家族の安心、安定を気持ちよく引き継ぐ「希望の財産」にしたいと誰もが思っている。(編集部・山本大輔)

AERA 2017年12月25日号より抜粋