今年1月に都内であった相続セミナーには、佐山和弘行政書士も講師で登場。「相続は心だ!」と熱く訴えていた(撮影/編集部・山本大輔)
今年1月に都内であった相続セミナーには、佐山和弘行政書士も講師で登場。「相続は心だ!」と熱く訴えていた(撮影/編集部・山本大輔)

 相続を骨肉の争いの舞台にしないために、専門家は「遺言書」の準備が大切だと指摘する。

 遺言によって、相続トラブルはどう回避できるのか。被相続人の財産をめぐる相続人同士の感情のもつれや気持ちの相違が相続トラブルを引き起こす大きな要因になることを踏まえ、相続遺言専門行政書士の佐山和弘氏(51)は感情面への訴えの効果を強調する。

 遺言には遺言者のメッセージを書き記す付言の欄がある。

「読んだ家族が、遺言を書いた人からぎゅっと抱きしめられているような遺言書が理想です。相続は、財産だけをつなげるものではなく、心を込めた『想い』を次の世代につなげる『想続』なのです。愛情たっぷりのメッセージを付言に書き残すのは、とても重要なこと」

 こんなことがあったという。佐山氏が管理・保管を託されていた男性の遺言を、その息子に読み上げたことがある。息子は次男で、父親とは不仲だったが、付言には「一緒に飲みに行きたかった」などと、父親の次男への想いが長々と書かれていた。最初は父親の死にも無関心に見えた次男だったが、付言の内容を聞きながら涙を流し始め、最後は父親の遺言通りの財産分割に同意した。

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