移住者に人気のニセコ 農業や温泉で新たな試み

綱島洋一AERA
温泉ソムリエ さとう努さん(53)/温泉ファンを集めた「ニセコ温泉部」を組織した。羊蹄山の雄大さに感動した一人。ニセコ温泉のTシャツを作り盛り上げる(撮影/工藤了)
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温泉ソムリエ さとう努さん(53)/...

 広大な自然。おいしい食べ物。人懐っこくて温かい人たち。長く寒い冬の後にやってくる、輝くような短い夏。北海道に魅せられた移住者たちが、この土地の新たな1ページを開いている。

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 北海道にも富士山がある。国内外のスキーヤーが訪れる著名なリゾート地「ニセコ」はその裾野に広がる。「蝦夷富士」と呼ばれる羊蹄山。ニセコが最も輝くのは「しばれる」冬。札幌生まれの私。「やっぱ、北海道だべさ」と胸を張りたくなる。

 この羊蹄山の麓に移住、農業を始めた名古屋市出身の服部吉弘さん(40)を訪ねた。

 北海道らしい大規模農業とは対照的に「個性豊かな農業」を掲げた。大きさの違うトマトを中心に葉物野菜をハウス栽培で少量ずつ生産する。農薬、肥料を使わない有機・自然栽培だ。

 農協に出荷しない。ニセコ町の道の駅にある農産物直売所に自ら持ち込む。旬の安心安全な食材にこだわるレストランや消費者が直接買い取ってくれる。

 本州の大学で土木工学を学び、建設会社に就職したが、30歳を目前に自問した。

「この仕事を一生、続けるのか。北海道で農業をしてみたい」

 趣味はスノーボード。北海道は「最高の土地」と思えたが、勤務先の上司が言った。

「お前が思い描くほど農業は甘くない。一度、体験してみろ」

●おいしさは人を幸せに

 服部さんは農業研修の地をニセコと決めた。札幌に近い。スノーボードを楽しめるゲレンデもあった。羊蹄山の麓でアスパラガス栽培に汗を流した。作業はきつかったが、充実していた。

 会社を辞し、4年間、研修。2010年春に独立。トマト栽培を始めた。わずか0.5ヘクタールの農地。懸命に取り組んだ成果はトマトの味に結実した。農地は2ヘクタールに広がった。

 服部さんは、安心安全でおいしい農作物は人々を健康で幸せにする、と確信。農家としての喜びを見いだした。

「鼻歌を口ずさむように楽しく農業をやりたい」

 農場の名を「ニセコ ラララファーム」と名付けた。

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