しかし、と前出の木村市議は言う。

「政治家の関与の有無などを含めるとなると、会計検査院の検査で真相究明するのは限界があるのでは」

 問われているのは、国民の共有財産である国有地が格安で売却されたのではないかという重大な疑惑だ。野党や地方議員の関与も含め徹底調査が必要だ。

 捜査機関が実態解明に動く可能性はあるのだろうか。在阪のメディア幹部はこう言う。

「メディアの報道はあふれていますが、現時点で大阪地検は特段の関心を持っていない、と聞いています」

●行政のやりたい放題

 10年の大阪地検特捜部の一連の証拠改竄事件で検察の信頼は地に落ち、いまだ失地回復には至っていない。

「ああいう事件が起きると、組織は10年間ぐらい死んでしまいます。死んだ検察が息を吹き返すには、国民が実態解明を強く求める事件を手掛けるしかありません」

 そう唱えるジャーナリストの大谷昭宏さんは、今回の国有地取引の構図をこう説く。

「官僚トップの頭脳と言われてきた旧大蔵省のキャリア官僚が全力でバックアップしている案件だと見ています。行政の“悪知恵”が司法を上回ったら、行政のやりたい放題がまかり通る。どんな悪知恵を絞ったところで司法の知恵にはかなわないんだ、ということを見せられるか。これは所管する大阪府警や大阪地検特捜部だけでなく、検事総長以下、日本の司法官僚の正念場ですよ」

 捜査機関が今なお、「特段の関心を持っていない」のだとすれば、職務怠慢のそしりは免れないのではないか。

(編集部・渡辺豪)

AERA 2017年3月13日号

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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