長谷川琢也(はせがわ・たくや)/3月11日が誕生日。著書に『10倍挑戦、5倍失敗、2倍成功!? ちょっとはみだし もっとつながる 爆速ヤフーの働き方』(撮影/Funny!!平井慶祐)
長谷川琢也(はせがわ・たくや)/3月11日が誕生日。著書に『10倍挑戦、5倍失敗、2倍成功!? ちょっとはみだし もっとつながる 爆速ヤフーの働き方』(撮影/Funny!!平井慶祐)
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 2012年の4月、ヤフーの体制が大きく変わった。現社長の宮坂学氏がCEOに就任。経営陣が新たに打ち出したのが「課題解決エンジン」というビジョンだ。その一環で、「東北の復興」という日本が抱えた最大の課題をITの力で解決するという壮大な任務を任されたのが、長谷川琢也さん(39)だ。

 この仕事は現地に入らなければできない。「支社を作らせてくれ」と会社に掛け合って「ヤフー石巻復興ベース」の立ち上げを決め、12年7月にチーム5人で宮城県石巻市に移住した。ヤフーのコーポレートコミュニケーション本部社会貢献推進室 東北共創リーダーとして、チームのメンバーと共に復興支援に取り組む。

●ヤフーがやるべきこと

 東北の海産物や食材、工芸品などをヤフーのサイト上でオンライン販売する「東北エールマーケット(旧・復興デパートメント)」の運営、自転車イベント「ツール・ド・東北」での民泊の実施など、石巻チームでさまざまなプロジェクトが進む。日常の動きは個人プレー。長谷川さんがリーダーとして心がけるのは、「ヤフーの社員として現地にいるんだ」ということを常に意識させることだ。

 石巻に入った当初は多方面からSOSの声がかかった。他にやる人がいたりITとなじまなかったりして、ヤフーが社を挙げて取り組むべき課題ではないと判断したものは断ったという。

 ボランティアではなくあくまでも事業。「利益を上げなければならない」は長谷川さんはもちろん、チームに刷り込まれている。例えば、復興デパートメントの取扱額は、11年12月から13年12月までの2年間で2.8億円。大和総研の調査によれば、新たな雇用の創出などを含め、経済効果は6億円を超える。

「復興支援」の意味合いが強かった活動も、時を経てフェーズが変わっている。震災がなかったとしても衰退していたであろう東北。長谷川さんにはその原因と課題が見えてきた。

●シーソーの真ん中に

 いま軸足を置くのは、「漁業の復興」。ワカメ漁師の阿部勝太さん(30)との出会いがきっかけだ。

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