「漁業の未来に危機感を持つ彼の話を聞いて、地方の課題解決につながるプロジェクトだし、ネットも生かせそう。こいつと何かやりたい、と思いました」

 漁師という仕事を「カッコいい、稼げる、革新的な」ものに。構想ができたのは12年だ。いつもなら動きを加速させるのだが、漁師たちの希望もあって、あえてゆっくり。漁船に乗って波にゆられ、漁師の仕事を手伝って、話を聞きながら仲間を増やした14年、若手漁師団体フィッシャーマンジャパンを立ち上げた。

「ヤフーで10年も働き管理職も経験して、リズムが体にしみついていた。評価のタイミングで成果を出さなくては、と」

 でも、ここではそもそも流れる時間の早さが違う。周囲を説得し、2年間、種まきを続けた。この間に、石巻市や宮城県漁協の協力も取り付けた。相手のふところにすっと入り込む能力は、長谷川さんの強みの一つ。生来の愛嬌(あいきょう)や人懐っこさもあるが、実は慎重な配慮の賜物(たまもの)でもある。

 メールや電話よりも、直接会って話す。メールでは、言い方が冷たくなったり、まどろっこしすぎて面倒に思わせてしまったりするからだ。準備しすぎればうさんくさくなり、その時点で壁ができるから、ネクタイと分厚い資料はNGだ。

 気をつけているのは、どちらかに寄り過ぎないこと。都会と地方。生産者と消費者。ネットとリアルの真ん中にいたい。

「シーソーの真ん中に立つみたいなことです。すごい揺れる。おっとっとっとってなりながら、間に入って話をしながら、バランスをとる。そこに自分の役割があると思っています」

(編集部・高橋有紀)

AERA 2016年10月10日号