佐藤:そう思います。ただ私は最終的にソースは出てこないと思う。MF社は「ハッキングで取られた」と言っていますが、常識で考えたら顧客リストやデータはスタンドアローンにしていますよね。

池上:最も守りたいものを、インターネットに常時つなげているはずはないですね。

佐藤:これがスノーデンのような個人だったり、ウィキリークスのような、どちらかというとアナーキズム的な傾向を持っている人たちがやった場合には、「正義の闘争のためにわれわれがやった」と明らかにするはずです。ところが今回、情報源はあくまでも匿名。これはとても不思議な感じがします。

 こんなに恐いものは、匿名の情報であっても、どこかで裏取りができないと扱えません。

池上:そういうことですね。

佐藤:そう考えると、どこかで情報機関が絡んでいる可能性があると思います。

●租税回避地は悪 家統制強まる

佐藤:タックスヘイブンがいけない理由は、きわめて簡単な話です。タックスヘイブンにお金を置いている富裕層、多国籍企業は、真面目に税金を納めている企業や一般納税者の上にフリーライダーとしてタダ乗りして国家サービスを使っているからです。だから、国家の巻き返しが始まっている。しかしそこで巻き返しを国家だけに任せると、国家統制がとても強まってしまうという危険性があります。

池上:国が管理すればいいという話になり、マイナンバーをさらに使って資本課税をしよう、となるわけですが、そもそも人々の自由や権利はどこへ行ったんだという、非常に大事な問題が出てくるわけです。

 それから「上に政策あり、下に対策あり」と中国で言われますが、まさにそれです。政策があればさらにその先を、裏をかいてやっていくということです。実際として国家の限界もあって、取り締まりは難しい。

佐藤:かなり激しい形での国家の力、要するに暴力装置的なものを働かせないとできないでしょう。

 一つあり得るのは、ファシズム的な状況になればできます。「金持ちはけしからん」と言ってパナマ文書に出てきた日本人をつるし上げて、こいつに税金を払わせないと大変なことにしてやるというのだったら、権力者は自分たちが生き残らなくてはいけないから、それを実行するでしょう。各国でそういう動きが出てくるかどうかということだと思うんですよ。

 ただ、その可能性はそんなに高くない。となると、制度的にマイナンバーをカッチリとやって資産課税を始めていくという方向になります。ただ、恐いんですよ、そういうのは。繰り返しになりますが、国家統制の強化につながりますから。

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