公式戦への復帰初戦から、他の追随を許さないアグレッシブな演技だった(※イメージ)
公式戦への復帰初戦から、他の追随を許さないアグレッシブな演技だった(※イメージ)

 公式戦への復帰初戦から、他の追随を許さないアグレッシブな演技だった。グランプリシリーズ第3戦中国杯で、浅田真央はショートとフリーでともにトリプルアクセルを成功させて、優勝した。改めてその内容を振り返ると、その圧倒的な内容に驚かされる。

 何といっても、圧巻だったのはショートだ。トリプルアクセル(3回転半)、3回転フリップ+3回転ループの連続ジャンプ、そして3回転ルッツの三つを跳んで、いずれも着氷。特に、3回転+3回転と3回転ルッツの二つは、これまでは回避してきた高度なジャンプだ。それが加わったプログラム「素敵なあなた」は、女子では最高難度の構成。25歳という年齢を危ぶむ声を、自らの演技で一蹴した。浅田は言う。

「まだまだ年齢的にも身体的にもできると思ったので、この舞台に戻ってきました。本当に自分ができないと思うところまでやる、それを私のスケート人生にしたい」

 トリプルアクセルが、現役の女子選手で成功させているのが浅田の他にロシアのエリザベータ・トゥクタミシェワだけ、という難しい技であることはよく知られている。

 二つの3回転ジャンプの基礎点がそのまま合計される3回転+3回転も、その成否が表彰台に乗れるかどうかのカギを握るほどの大技だ。浅田自身は安全策をとり、2010年のバンクーバー五輪でも、14年のソチ五輪でも、ショートには組み込まなかった。このコンビネーションジャンプを成功させるだけで、浅田の得点には基礎点10.4がプラスされる。

 最も驚かされたのが、3回転ルッツ。現行ルールではトリプルアクセルに次ぐ高得点のジャンプだが、跳び方が正確でないと大幅に減点されてしまう「ハイリスク・ハイリターン」なジャンプでもある。少しでも不安があれば「回避」が得策で、浅田も3回転+3回転同様、2度の五輪のショートでは回避してきた。

 もし、18年の平昌(ピョンチャン)五輪で、今シーズンと同じジャンプ構成で演技する浅田を見ることができたら……。想像するだけで心躍る。次は、11月27日に長野で開幕するNHK杯に登場する。

AERA 2015年11月23日号より抜粋