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  W杯でなでしこジャパンのキャプテンを務めた宮間あや。チームを準優勝にまで導いた、彼女のキャプテンシーとは。その考え方は、仕事の場でも通じるものがありそうだ。

 宮間のキャプテンシーには、三つのキーワードがある。

 一つ目は「フラット」。宮間はスポーツにありがちな上下関係を嫌い、リスペクトし合える関係を構築しようとする。

 今年1月に30歳になった彼女。所属クラブの岡山湯郷ベルには一回り年下の選手もいるが、付き合い方はベテランと変わらない。

「“同じ目線”を心がけることが大事です。私が完璧にすべてをこなすと『あの人は特別だから』と思われて、やりにくくなる。メリハリは必要ですが、よりフラットな状態で話ができるよう常に意識しています」と、宮間は話してくれた。

 二つ目は「共感」。以前宮間は、若手を伸ばすコツは?と聞かれると、こう答えた。

「大事なことは一緒になって失敗すること、これが一番いい。サッカーなので、私だけ成功してチームメートだけ負けるということはありません。一緒になって失点したり負けたり……とにかく、とことん一緒にやることで分かりあえます」

 4年前のW杯ドイツ大会で、不発に終わりスタメンを外されたエース永里(大儀見)優季を、大会中そばで励まし続けたのは宮間だ。心が折れている選手がいたら、一緒になって折れる。一緒になってどん底を味わう。そして一緒に復活を遂げる。これもまた宮間流だ。

 三つ目は「ギブ&ギブ」。ギブ&テイクではなく、ひたすらギブだ。昨年のアジア杯。試合の翌日、サブ組の練習に突然現れて、ボールや給水の準備を始めた。しかも給水用のペットボトルには選手それぞれへのメッセージが書かれていた。

 歴代のキャプテンを分類すると大部由美(U―19日本代表コーチ)や磯崎(池田)浩美(尚美学園大学女子サッカー部総監督)のように言葉で鼓舞するタイプ、「苦しい時は私の背中を見て」と、澤のように行動で示すタイプがいる。宮間はどちらでもない。ただ、彼女のような共感を大事にするリーダーシップは、今の時代に最も合っているのかもしれない。

AERA  2015年7月20日号より抜粋