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 収入が十分あって、結婚する気もあるのに、独身。努力を重ねてキャリアや人生を切り開いてきただけに、結婚は成果が不確実に映る。彼ら、彼女らにとって、結婚は「コスパが悪い」ように思えるようだ。

 PR会社に勤めるケイコさん(36)は、最近、恋愛や結婚のために以前ほどエネルギーを注げなくなったという。

「以前、つきあっていた彼のために仕事をセーブして尽くしたけど、ダメになったとき手元に何も残らなかった。同棲までした彼とも結局、結婚には至らず。これほど無駄な時間はないと思った」

 今は仕事に邁進する日々。朝食はデパートで買ったグラノーラとカットフルーツを食べ、ウォーターサーバーの水を飲み干して出勤する。自分の思うように日々をデザインできるのが何よりも快感だという。

 1日は24時間。人生は一度きり。自ら模索し続けないとキャリアアップも望めない時代を生きる独身男女にとって、恋愛や結婚は、成果が不確かでコストパフォーマンス(コスパ)が悪いものに思えてならない。

 ただ、そんな独身者にも、痛烈に結婚したくなる時がある。バツイチ独身のタカシさん(35)は、ゴールデンウィークや年末などひとりの時間があまりにも長すぎると、寂しさが込み上げてくるという。前出のケイコさんもこう本音を吐露する。

「仕事で失敗して精神的に参った時は、家族という落ち着けるハコが欲しいと思う」

 家族がいる安心感はほかでは代えられない。そう思っていたら、それさえも、もっと手軽にコスパのいい手段があるという。

 家族や会社に縛られない生き方を提唱した『持たない幸福論』(幻冬舎)の著者で、京都大学卒の社会派男性ブロガー、pha(ファ)さん(36)は、都内の一軒家に20~30代の3人とと一緒に暮らす。借りている家も、同居人もネットを通じて調達したという。ITやネットに興味がある人が集まるシェアハウスで、「ギーク(オタクの意味)ハウス」と名づけた。

「世の中には何かしら落ちているものです」

 phaさんは、ネット関連のわずかな収入で、好きな時に起きて、好きな時間に寝る生活の自称ニート。以前は大阪で会社勤めをしていたが、就職すると友人との縁も薄れ、周囲に気の合う人もいなかった。そのままだったら、寂しさから抜け出すために結婚していたかもしれないという。

「ひとり暮らしは寂しい。でもそれを埋めるのに、家族以外にも選択肢があると気づいたんです。シェアハウスという居場所をつくった今は孤独じゃない」

AERA 2015年6月22日号より抜粋