それでもジャーナリストは戦場をめざす(※イメージ写真)
それでもジャーナリストは戦場をめざす(※イメージ写真)

「イスラム国」に斬首された米国人フリージャーナリスト。母親と恩師が、彼が「報じた理由」を語った。

 昨年シリアで「イスラム国」に殺された米国人フリージャーナリストのジェームズ・フォーリーさん(当時40)は、ノースウェスタン大学大学院ジャーナリズム学科で学んだ。

 フォーリーさんは卒業後、紛争地取材のフリーランス記者になり、イラクとアフガニスタンで米軍に従軍。リビアの反政府軍取材でカダフィ政権の兵士に捕まり、目の前で仲間のジャーナリストが撃たれ、自身も刑務所で44日間拘束された。この経験を、若い学生にこう語った。

「罪悪感でいっぱいだった。なぜ早く引き返さなかったのかと。圧倒的な無力感だった」

 そんな挫折があっても取材の意欲は失わずにシリアに向かい、「イスラム国」に捕らえられ、殺害された。母のダイアンさんは息子のことをこう語る。

「フリーの記者は民主主義のために絶対に必要です。ジムは危険を承知していたし、フリーの記者がメディア企業に利用されていることも知っていましたが、現場から事実を伝える情熱の方が強かったのです」

 米政府はテロリストとは一切交渉しない、身代金も払わない方針だ。ダイアンさんら家族は、もし勝手に身代金を払えば、払った家族も罪に問われると、国務省のひとりから「半ば脅された」と語る。政府は批判を受け、オバマ大統領は人質救出のための方法を見直すと発表した。

 フォーリーさんの大学院での恩師、エレン・シェラー教授はこう言う。

「イスラム国は人質に取ったジャーナリストの命を完全に道具として使い、最も残忍な方法でメッセージを戦略的に伝えてくる点で、これまでの紛争地取材価値であると認めない『イスラム国』のような相手には、ジャーナリズムの公共性や中立性を主張しても通用しないことは考慮に入れないといけない。状況次第で現地入りせず、周辺から取材するのも一つの選択肢です」

AERA 2015年3月2日号より抜粋