断食用の財布はコレ。折り畳めばお札は数枚入るが、カード類はどうやっても入らない(撮影/ライター・福光恵)
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断食用の財布はコレ。折り畳めばお札は数枚入るが、カード類はどうやっても入らない(撮影/ライター・福光恵)

 自他ともに認める買い物中毒。つまり、ムダ遣い大王だったアエラライターが、編集部からの指令で「買い物断食」に挑戦。買い物しない生活は、思わぬ効果もあったようで…。

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 それにしても、どうやんの、これ。ムダ遣いを絶つのはいいが、ムダと必要の線引きは難しい。だいたい、最初からムダと思って買ったものなんてひとつもないし。いっそ「お金は使わない」という、夏休みの目標みたいな方針を打ち立てる。例外は、仕事の経費のみとした。「知恵袋」系のサイトで予習してみると、ムダ遣い防止の第一歩はクレジットカードを持ち歩かないこととある。

 そこで今まで使っていたデブ財布を、カードも入らない小銭入れに切り替えることに。つい新しい小銭入れをアマゾンで物色してしまうが、はたと気がついて家にあったものを利用。中に入れるのは3千円以内の小銭とした。

 最初はびくびく外出していたが、やってみるとなんてことはない。交通費をスマホの電子マネーで払えば、普通に仕事をしているぶんには、財布を出す場面なんてほとんどないじゃん。店やカフェは見ないようにして、ほぼ100%直行直帰。何だか時間にまで余裕が出てきた。

 問題は、食べるものと生活用品。2~3日は家にどっさりあった食料でしのいでいたが、いよいよそれも底が見えてきた。これが“断食”といえるのかは知らないが、しょうがない。人にたかることにする。

 格好の「たかられ」ターゲットとなったのは夫だ。知恵袋で勉強したのか知らないけど、夫は飲み過ぎ防止のためにビールを買いだめせずに、毎日買いに行くのが日課。これに後ろからついていき、必要なものを買ってもらうという道が開けた。

 金の切れ目は縁の切れ目というけれど、逆に金がつながると縁もつながるみたいで。夫との関係が濃くなるという思いがけない効能があった。

「あのー、アイスも買ってもらっていいですか?」

 とか、謙虚にたかると、夫はちゃんと買ってくれる。しかも、うざがりながらもまんざらでもない様子。一方、人のお世話になる以上、私もハーゲンダッツを諦めてスーパーカップを選ぶなどの心遣いも忘れない。何よりアイスひとつとはいえポンポン買ってくれる夫に、すっかりなつくようになった。なんだ、愛ってお金で買えるじゃない。

AERA 2014年9月15日号より抜粋