アサヒグループホールディングス国際部門副部長浅井裕さん(41)1996年に甲南大学を卒業し、アサヒビール入社。横浜市社厚木支店で営業を担当した後、99年から国際関連の部門を歴任。2011年から現職(撮影/倉田貴志)
アサヒグループホールディングス
国際部門副部長
浅井裕さん(41)

1996年に甲南大学を卒業し、アサヒビール入社。横浜市社厚木支店で営業を担当した後、99年から国際関連の部門を歴任。2011年から現職(撮影/倉田貴志)
海外で、何もないところから事業を立ち上げる。言葉も文化も全く異なる部下100人の上司として就任する。そんな状況を乗り切るには、何が必要なのか(撮影/写真部・岡田晃奈、切り絵/辻恵子)
海外で、何もないところから事業を立ち上げる。言葉も文化も全く異なる部下100人の上司として就任する。そんな状況を乗り切るには、何が必要なのか(撮影/写真部・岡田晃奈、切り絵/辻恵子)

 いま多くの企業がその育成に力を入れる、グローバル人材。世界を舞台に活躍できる人材をどれだけ確保できるかが、人事最大の課題になっていると言ってもいい。世界を相手に実績を残すには、どんな能力が必要なのか。そのひとつとして「委任力」があるようだ。

 アサヒグループホールディングス国際部門に所属し、いまは韓国の現地法人に理事として出向している浅井裕さん(41)は、2008年9月、着任してすぐにこう発破をかけた。

「(輸入ビールで)シェアトップを取りましょう」

 当時、同社が展開していたスーパードライのシェアは、ミラー(米)、ハイネケン(蘭)に次ぐ3位だった。そこから一気に1位を狙うと宣言したのだ。浅井さんはこう振り返る。

「文化や考え方が異なる海外で組織を動かすには、まず具体的でシンプルなビジョンや目標が必要です。そのうえで、いかに現地社員に自主的に動いてもらえるかが、成功のカギになる」

 ビジョンや目標を提示し、そこまでの到達方法については、現地の社員に任せる。「委任力」が結果を生むと考えている。

「アイデアを出してください」「やりたいことを持ってきてください」

 そう呼びかけて、提案を待つ。あがってきた提案に、アサヒとしてのノウハウや自身の経験から、アドバイスを加えてリスクを減らす。時には研修として日本に出張させ、日本独自の販促手法などを「発見」してもらう。結果として、現地社員が自ら考えた施策が高いモチベーションによって展開されていく。

 浅井さんが着任して以降、日本食レストランだけでなく、すべての大手小売りチェーンにスーパードライを置けるように。消費者の目に触れる機会が格段に増え、マス広告の効果も一気に出やすくなった。韓国駐在4年目となる11年、輸入ビールでシェアトップを実現した。浅井さんは言う。

「社員を信じて任せることで、韓国人の熱さを引き出せたのだと思っています」

AERA 2013年12月2日号より抜粋