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「おやつ廃止」で大人が大騒ぎ? その背景とは

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世田谷区にある民間施設「ラボアンドタウン まちなか学童」のおやつの時間。午後3時半、おやつの準備を手伝って「いただきます」。笑顔とおしゃべりが増える(撮影/岡田晃奈)

世田谷区にある民間施設「ラボアンドタウン まちなか学童」のおやつの時間。午後3時半、おやつの準備を手伝って「いただきます」。笑顔とおしゃべりが増える(撮影/岡田晃奈)

この日のメニューはカステラと塩せんべいとブドウ。アーモンドと小魚もおかわり用に準備されていた(撮影/岡田晃奈)

この日のメニューはカステラと塩せんべいとブドウ。アーモンドと小魚もおかわり用に準備されていた(撮影/岡田晃奈)

 今年の4月、東京都江戸川区では児童の放課後対象事業「すくすくスクール」で、これまで提供されていた補食(おやつ)が廃止された。

 同区でのおやつ廃止の理由の一つは財政難だが、今年1月下旬に区教育委員会から保護者に配布されたプリントには、「カロリーの過剰摂取、食材の廃棄が出る、食物アレルギーの児童への対応が困難」という理由も示されていた。突然の通知に驚いた保護者らは、すぐに陳情書を教育委員会に提出。補食委託事業継続を求めた5千筆の署名も集めたが、結局おやつは廃止された。

 おやつ廃止の動きの背景には、文部科学省と厚生労働省の連携不足もある。全国学童保育連絡協議会の2012年の調査では、全国にある学童保育でおやつが提供されているのは96.3%に上る。一方、同協議会によると、今年5月1日現在で学童保育の利用児童数は88万8753人と過去最多になった。学童保育が満員で児童を受け入れられない自治体も増え、待機児童問題が深刻になっている。

 そのため厚労省が管轄する学童保育の代わりに、放課後の“児童の安全な居場所対策”として文科省が推進する「放課後子ども教室」を実施する自治体も出てきた。江戸川区もその一つだ。この場合、開設時間や規模、職員配置といったものは学童保育の指針に合わせる必要はなく、児童の人数制限もなくなるため、待機児童問題は解消されることになるのだ。

 この二つの事業を一体運営することが、おやつ廃止につながっている。両事業を一体的に運営した場合、すべての児童を受け入れるため、待機児童はゼロになる。しかし、ここでは家庭の事情によっておやつに対する温度差も生まれる。親が家にいて、おやつは帰宅して食べられる子どももいるからだ。そのため“おやつ”が一部の子どもにだけかかる“手間”になるのだ。たとえ親が手間をかけ、おやつを持参させたくても「学校施設を利用するため、学校側は事故などを想定して許可できない」という論理で不可となる。

 突然の「おやつやめます」通知が配られる可能性は、他の自治体にも広がっている。江戸川区でおやつの廃止が決定されたのとほぼ同時期、同じく文科省と厚労省の事業を一体運営している荒川区のある二つの学童保育クラブでも、“おやつ廃止事件”が起こっていた。

「とにかく大人が“大騒ぎ”しました」(40歳の女性会社員)

 すぐにSNSなどを利用して、保護者同士で情報を共有。父親たちも区役所に出向き、抗議を繰り返した。区長に直訴した母親もいた。区の学童保育クラブ連絡協議会など地域の団体とともに訴え続けた結果、同クラブで4月に廃止されたおやつは同月下旬に再開された。

「まとまりやすい小さな区で、団結しやすかった。父母会が機能していたのも幸いした」

 と、保護者の一人は言う。

 全国学童保育連絡協議会の真田祐事務局次長は「運営の一体化は安直な待機児童の解決法」と指摘する。

「学童保育は家庭的な生活の場。二つの事業の連携はありえるが、一体化はどうか? 自由に帰れる子どもと、学童保育の子を一緒に預かることで、保育の質が落ちても仕方ないという考えはおかしい」(真田さん)

AERA 2013年10月21日号


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