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子どもは“人質”? 保育園に遠慮する母親たち

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 本来なら言いたいことを言い合えるはずの保育園と保護者の関係。しかし今、もの言えぬ保護者が増えているようだ。その事情とは。

 今日の給食の食材はどこの産地のものだろう──。4歳と2歳の娘を同じ民間の認証保育園に通わせる都内在住のA子さん(37)は、毎日気が気でない。

 それが何かといえば、東日本大震災の福島第一原発事故による放射能漏れの食べ物への影響だ。自宅では今も子どもたちのために米、野菜、魚、水…すべての飲食物は放射能の懸念がないと思われる産地から取り寄せている。園ではその日の食材の「産地」までは明示していない。産地公開を園に要求したいと思うが、グッと我慢している。

「やっかいな、モンスターペアレンツと思われるのが怖いです」

 つらい経験がある。A子さんは2人の娘を今の保育園に今年4月から通わせているが、直前の3月中旬、それまで通わせていた民間の認可外保育園から突然退園を通告された。「紙オムツを使わない」「園への送迎にタクシーを使わない」といった園の方針に従わないという理由だった。新学期まであと2週間しかない。パニックになったA子さんは今の園に直接電話をかけ「受け入れてください」と頼み込み、入れてもらった。

「どれだけ探すのが大変だったか。今のところは認証保育園なので、やめさせられることはないと思うのですが、もう問題は起こしたくないです」

 子どもが“人質”──。保育園の取材を続けていると、保護者の間から「保育園に言いたいことがあっても言えない」「子どもを、園に人質にとられているようなもの」という声を聞くことがある。

 認可、認可外を問わず、本来であれば、言いたいことを言えるのが園と保護者の関係のはず。それを、ここまで保護者が尻込みをするのはなぜか。

 5歳と3歳の子どもを都内の認可保育園に通わせるフリーデザイナーのB子さん(44)は、こう話す。

「これが仕事であれば、仕事量が減ったり切られたりするだけ。でも、意見を言って自分の子どもに跳ね返るかもしれないと思うと、言うのを躊躇します」

「3.11」の直後、B子さんは放射能の影響が心配で除染や測定を区に直接電話してかけあったが、その時、子どもが退園させられる措置を一番心配した。B子さんが住む東京南部の区は待機児童が多いことでも知られる。やめさせられたら、子どもたちは行くところがなくなる。

「今になってみると勝手に心配していただけと思うのですが、あの時は、やはり子どもは人質にとられて、言いたいことも言えないと思っていました」

 児童福祉法によれば、保護者が昼間働いているなど「保育に欠ける子ども」は、保護者から申し込みがあれば市区町村の責任で保育所に入所させる義務がある。一方、退園について明確な定義はないが、ある自治体の保育担当者はこう説明する。

「例えば、保護者が仕事を辞めて何カ月も無職のままでいたりする場合は、子どもは『保育に欠けない子ども』となり、他に待っている児童もいるのでやめていただくことはある。しかし、園の方針に従わなかったりクレームを言ったりしてくるからといって、子どもを退園させるというようなことはありません」

AERA 2013年9月30日号


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