ヤフー×本屋大賞「ノンフィクション本大賞2022」が決定! 受賞は川内有緒『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』

2022/11/11 17:15

『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』川内 有緒 集英社インターナショナル
『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』川内 有緒 集英社インターナショナル


 全国の書店員が「いちばん売りたい本」を選出する「本屋大賞」と、Yahoo!ニュースがタッグを組んだ「Yahoo!ニュース|本屋大賞 2022年ノンフィクション本大賞」が11月11日、東京・ヤフー株式会社紀尾井町オフィスで発表されました。大賞を受賞したのは、川内有緒氏の『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』(集英社インターナショナル)です。

 第1回受賞作品は、角幡唯介氏の『極夜行』(文藝春秋)。第2回目以降は、ブレイディみかこ氏の『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(新潮社)、佐々涼子氏の『エンド・オブ・ライフ』(集英社インターナショナル)、上間陽子氏の『海をあげる』(筑摩書房)が大賞を受賞しました。
 まずは、ヤフー株式会社メディア統括本部長の小林貴樹氏が登場。「選りすぐりの6作品を私も読ませていただきましたが、どれもまったく知らなかった世界がそこにはあると感じました。新しい世界や社会、考え方に触れ、追体験できることがノンフィクション本の醍醐味だと思います」とノンフィクション本の魅力を伝えました。
 選考の対象は、2021年7月1日から2022年6月30日の間に日本語で出版されたノンフィクション作品全般(※海外作品の翻訳本は除く)。約100人の書店員の投票で7月26日にノミネート6作品を発表し、二次選考を経て大賞の発表となりました。
 大賞を受賞した川内有緒氏は「とても光栄です。とてもあたたかい気持ちになる賞を授かり、ありがとうございます。大きい喜びもありますが、さらに大きな驚きに包まれています。この本は、タイトル通り、全盲の白鳥建二さんと、友人のマイティの3人がバンドメンバーみたいに全国の美術館を巡って、作品を前にしていろいろなおしゃべりをする、それだけの本です。この本をきっかけにして、どういう風に生きたいのか、この社会はどうなっていくことがいいのかを考えてくださった人がいた、と私は想像しました。(中略)読み終わったあとにすごい感動を覚えるようなことはなく、いろいろな会話がただ淡々とながれていくだけの本が大きな賞に選ばれることに、私は希望を感じました」と喜びを語りました。

 授賞式では、川内氏に加え、本に登場する白鳥氏とマイティ氏も登壇し、3人のトークセッションが行われました。まず川内氏が「また3人で、できれば海外の美術館に行きたいです。(マイティが住む)オランダを巡りたいです」と話し、白鳥氏が「めでたい! この一言ですね。(川内氏に)僕のことも書いてもらって、その本のおかげでいろいろなところにも行くことができて、とにかくめでたいです」とコメント。マイティ氏は「この本は3人で美術館に行ったことがきっかけで生まれましたが、そのときは川内さんが本を書くとも思っていなかったし、賞を受賞するなんて夢にも思っていませんでした」と話しました。

(左から)マイティ氏、川内氏、白鳥氏
 トークは川内氏と白鳥氏の出会いについて。マイティ氏を介して2人は出会ったわけですが、当時についてマイティ氏は「白鳥さんは人の会話から作品を鑑賞します。その人の言葉の使い方や言葉の選び方などから性格が見えてくるんです。川内さんは作家なので、どういう言葉を使うのか興味本位で川内さんを誘いました。私は美術の世界の人間ですが、このおもしろい鑑賞方法を、美術ではない人に書いてもらえたらラッキーだなあと思っていたら、本当に本にしてもらえた、という感じです」と振り返ります。
 一方で川内氏は3人で美術鑑賞したときのことについて「一緒に作品を観ていると不思議なことが多々起こりました。言葉にすることによってしっかりと作品を観るようになり、作品のディテールから、その人の表情、背景、雰囲気まで伝わってくる。すると、この作品はこういう作品だったんだ、という新しい見方を発見したような感動を覚えました。マイティが言っていた『白鳥さんと一緒に美術を観るとおもしろい』の正体はこれか? と思いました」と話し、笑顔を見せました。
 このようにして誕生した同作。本屋大賞実行委員会からは、「本書では3人がアート作品を巡るわけですが、どういった作品を観ているのかが描かれていると同時に、川内さんの、アートとは何か、差別とは何かなど、深い問いがめくるめくように続いていく作品なのではと思いました」と感想が述べられました。
 それに対し川内氏は「答えは簡単に見つからない。一生かかって一つひとつの答えを探していくのが人生。この本は答えがきちんと出ないままに終わっているんですが、それでいいと私は思っています。答えがないこともあるってことを書く人がいてもいいかな」とコメントしました。
 気になる人はぜひ書店で手に取ってみてください。また、全国の書店員の推薦から絞り込まれたノミネート6作品は以下のとおり。
『朝日新聞政治部』鮫島浩/講談社
『嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか』鈴木忠平/文藝春秋
『さよなら、野口健』小林元喜/集英社インターナショナル
『ソ連兵へ差し出された娘たち』平井美帆/集英社
『妻はサバイバー』永田豊隆/朝日新聞出版
『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』川内有緒/集英社インターナショナル
■Yahoo!ニュース | 本屋大賞 2022年ノンフィクション本大賞 特設サイト
https://news.yahoo.co.jp/nonfiction/

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