島国・日本。実際、日本にはどのくらいの数の島が存在するのか見当がつくでしょうか。本州や北海道、四国、九州、沖縄本島、北方領土なども含めた、周囲が100メートル以上の、日本にある"島"の数は、なんと6852島。そしてその各々に、自然や民俗、独自の料理や歴史など、さまざまな特徴が息づいています。



 それぞれの島には「祭りや行事、集落景観・自然景観、鉱石や石炭や石材、食材や地酒、そしてかつての生活の痕跡などまで、島で大切に守られ受け継がれてきたもの」があるというのは斎藤潤さん。本書『ニッポン島遺産』では、斎藤さんが取材した40もの島々に焦点が当てられ、その魅力が伝えられていきます。



 たとえば、瀬戸内海の島々のなかでも、とくに有名な"小豆島"。香川県小豆島町と土庄町の二つの町を有する、面積153.25㎢の瀬戸内海に浮かぶ島ですが、小豆島といえば、二十四の瞳、そしてオリーブのイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。



 小豆島でオリーブの栽培がはじまったのは1908年。輸出用のオイルサーディンのオイルを国産化して外貨の流出を防ぐため、農商務省から香川、鹿児島、三重の3県に試作用の苗が配られたのがきっかけ。



 小豆島最初の苗は2年後に結実しはじめ、3年目にはオリーブオイルを絞ることに成功。その後、砕実機や圧搾機も導入し、オリーブの新漬けの元となる緑の実の塩漬けは、大正天皇にも献上されたのだといいます。



 そして平成に入ると、徐々に国産オリーブの需要は高まり、とくにこの新漬けは大人気に。そのため搾油用の完熟オリーブが品不足となり、国産オリーブオイルの高騰を招いている状況なのだそうです。



 あるいは、待ち合わせ場所としても馴染み深い、渋谷駅のモヤイ像。このモヤイ像は"新島"を産地とする、コーガ石といわれるガラスの原材料でできているのだそう。東京都心から南へ約160kmの洋上に位置する、面積22.97㎢、人口2315名の新島では、建物の多くがコーガ石造り。神社の灯篭や鳥居、橋、社までコーガ石なのだといいます。そして、このコーガ石から、独特の透明感のある淡いオリーブグリーンの新島ガラスができるのだといいます。



 軍艦島や屋久島といった、近年話題の島はもちろん、本書で紹介される島々に目を向けてみれば、まだまだ知らない多くの発見があるはず。まだ夏休みの予定がない方、気になった島に実際足を運んでみてはいかがでしょうか。