東尾修
東尾修

 西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修さんは、DeNAに入団したトレバー・バウアー投手の今後に注目する。

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 鳴り物入りでDeNAに入団したトレバー・バウアー投手が2試合連続でKOされた。5月3日広島戦の来日初登板こそ、7回1失点で勝利投手となったが、9日の巨人戦は6回11安打で7失点。16日の広島戦にいたっては、2回で8安打を浴びて7失点KOされた。

 三浦大輔監督も「捉えられすぎている。癖も含め、アナリストたちと良くなるようにやっていかないと」と話したが、155キロを超える直球に変化球のキレもある。癖が出ていると疑う気持ちもわかるし、フォームを細かく見直す必要もあろう。

 ただ、根本的に球が高い。身長185センチと決して高いとは言えないが、リリースポイントから角度なく高めにきてしまうボールは、簡単に捉えられてしまう。走者を出せば足でかき回してくるのが日本。神経質になるのもわかるが、彼ほどの球威、キレがあれば、走者を出しても本塁にかえさなければいいというスタイルを貫けるはずである。ただ、ベルトラインの高さにボールが集まっては、意味がない。

 メジャーでは、アッパースイングが全盛だし、直球を高めに配せば空振りがとれるといった事情もあるだろう。メジャーよりも傾斜が少なく、やわらかいマウンドだと、踏み出した左足にしっかり上体を乗せていくことにはアジャストが必要になる。低めに強い球を投げるには、そういったこともクリアしなければならない。さらに、日本のバッターはメジャーの打者のように強振はしてこない分、コンタクトがうまい。直球が低めにこないとわかれば、落ちる球に対する目線も上げられる。小手先でなく体全体で低めに投げられるようにならないと、不安定な投球は続くだろう。

 2021年の年俸は約40億円。そういった選手が日本に来ても、すぐに圧倒できるほど甘くないということだ。初登板の投球を続けられれば、2桁勝利はできると思うが、本人がどれだけ本気で修正を図れるか。2軍に落として再調整とはいかない投手だけに、今後の変化を注目して見ていきたいと思っている。

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東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

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