浦井健治(うらいけんじ)/ 1981年生まれ。東京都出身。2000年「仮面ライダークウガ」で俳優デビュー。06年「アルジャーノンに花束を」「マイ・フェア・レディ」の演技が評価され、菊田一夫演劇賞受賞。09年紀伊國屋演劇賞個人賞、10年読売演劇大賞杉村春子賞、15年読売演劇大賞最優秀男優賞を受賞。ミュージカル「アルジャーノンに花束を」は4月27日~5月7日、日本青年館ホールで上演。[撮影/写真映像部・高橋奈緒 ヘアメイク/山崎順子 スタイリスト/吉田ナオキ]
浦井健治(うらいけんじ)/ 1981年生まれ。東京都出身。2000年「仮面ライダークウガ」で俳優デビュー。06年「アルジャーノンに花束を」「マイ・フェア・レディ」の演技が評価され、菊田一夫演劇賞受賞。09年紀伊國屋演劇賞個人賞、10年読売演劇大賞杉村春子賞、15年読売演劇大賞最優秀男優賞を受賞。ミュージカル「アルジャーノンに花束を」は4月27日~5月7日、日本青年館ホールで上演。[撮影/写真映像部・高橋奈緒 ヘアメイク/山崎順子 スタイリスト/吉田ナオキ]

 ミュージカル俳優が忙しいのは、今に始まったことではないが、浦井健治さんの忙しさはちょっと特別だ。浦井さんに出演する舞台への思いや仕事観などを聞いた。

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 最新アルバム「VARIOUS」を引っ提げてのツアーは5月と6月に東京と大阪で開催されるが、売れっ子ミュージカル俳優というのは、2年先までスケジュールが決まっているとされる。浦井さんもその例に漏れず、ツアーの前にはミュージカル「アルジャーノンに花束を」の上演も控える。今年は、1月から3月にかけてミュージカル「キングアーサー」で全国を回り、3月はアルバムリリース、4月からミュージカルというのだから、その体力たるやアスリート並みだ。「アルジャーノン~」は、2006年の日本初演時にチャーリイ・ゴードン役を演じ、多くの演劇賞に輝いた。14年の再演から、9年ぶりの再々演となる。

「最初に演じたときは20代でしたが、再演時には30代になっていて、今回は40代。その間に、僕も本当にたくさんの経験をさせていただいたんですが、『アルジャーノン~』に関しては、音を聞くだけで当時の景色や感情が蘇ってくる。一つの役を、こうして時間の間隔を空けながらも演じられることは、以前気づけなかった何かに気づけることもあるんじゃないかと」

『アルジャーノンに花束を』といえば、知的障害があるチャーリイが最新の脳手術によって天才になるというSF小説だ。浦井さんは、このミュージカルがコロナ禍を経ての今に上演されることに意味があるのではないかと感じている。

「チャーリイを演じるたびに、人間が生きていく上で愛情がどんなに大切かを痛感させられるのですが、全世界がパンデミックを経験した今、上演されることで、それぞれ『人を大切に思う気持ちこそが、人生を豊かにする』ということを、再確認できるのではないかと思います。同時に、人間にとって文学や演劇や音楽がいかに大切であるかということも。『アルジャーノン~』はジャンルとしてはSFだけれど、最初にこの小説が発表された60年ぐらい前から比べると、フィクションとは言い切れない部分もあって。僕らは作者のダニエル・キイスが描いた未来にいて、でも、人間にとって本当に大切なことは60年前も今も変わらないなって思うんです」

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