観閲式で首相の訓示を聞く自衛隊員(2021年11月、代表撮影)
観閲式で首相の訓示を聞く自衛隊員(2021年11月、代表撮影)

<我が国の防衛生産・技術基盤は防衛力そのもの。強化は必要不可欠>

【図表】防衛費大幅増で潤う会社は? 防衛省との契約高が多い20社はこちら

 政府は昨年12月にまとめた外交・防衛政策の基本方針「国家安全保障戦略」で、防衛産業の重要性についてこう強調した。

 この戦略をはじめとする「安保関連3文書」のなかで政府は、日本の安全保障環境は「戦後、最も厳しくなっている」と危機感をあらわにし、防衛力を抜本的に強化する方針を示した。

 となれば当然、防衛予算は大きく増える。同じく3文書の一つで、防衛装備品の取得計画を記す「防衛力整備計画」(旧・中期防衛力整備計画)では、今後5年間の防衛費を計43兆円と、前回の計画の1.5倍以上に引き上げた。

 政府の大盤振る舞いに、防衛事業を手がける大手メーカーは「強みの一つであるサイバーセキュリティーなどの先端技術の領域は今後さらに重要性が増す。事業成長の機会」(NEC)、「安全保障環境が格段に厳しさを増していることの表れ。政府と密に連携しながら引き続き我が国の安全保障に貢献していく」(IHI)などと、おおむね歓迎ムードだ。株式市場でも関連の事業を手がける「防衛銘柄」の注目度は高い。

 では予算増で恩恵を受けるのはどんな会社か。参考になるのが、防衛省傘下の防衛装備庁が毎年公表している「中央調達の概況」だ。直近の2022年版に、21年度の防衛省との契約高が多い順に20社が載っている。

 中央調達とは戦闘機や潜水艦、トラックといった自衛隊が使う防衛装備品について、防衛省が企業と契約を結んで一元的に買うことを指す。21年度は契約ベースで総額約1兆8031億円だった。中央調達以外にも、陸・海・空各自衛隊の部隊などが独自に買う「地方調達」と呼ばれるやり方もある。

■上位20社以外に注目企業ズラリ

 国内の防衛産業は裾野が広く、元請けの大手から下請け企業まで含めれば数千社に及ぶと言われる。「防衛白書」(22年版)によれば、戦闘機は約1100社、戦車は約1300社、護衛艦は実に約8300社が生産に関わっている。

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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