阿部寛(あべ・ひろし)/ 1964年、神奈川県生まれ。俳優。「トリック」「結婚できない男」「テルマエ・ロマエ」「下町ロケット」など数々のドラマや映画で当たり役を持つ。受賞歴も多く、今年は映画「護られなかった者たちへ」で日本アカデミー賞優秀助演男優賞、「異動辞令は音楽隊!」でニューヨーク・アジアン映画祭のスター・アジア賞を日本人で初受賞した。主演最新作のドラマ「すべて忘れてしまうから」が、動画配信サービスのディズニープラス「スター」で配信中。(写真=木村哲夫 ヘアメイク/AZUMA(M-rep
阿部寛(あべ・ひろし)/ 1964年、神奈川県生まれ。俳優。「トリック」「結婚できない男」「テルマエ・ロマエ」「下町ロケット」など数々のドラマや映画で当たり役を持つ。受賞歴も多く、今年は映画「護られなかった者たちへ」で日本アカデミー賞優秀助演男優賞、「異動辞令は音楽隊!」でニューヨーク・アジアン映画祭のスター・アジア賞を日本人で初受賞した。主演最新作のドラマ「すべて忘れてしまうから」が、動画配信サービスのディズニープラス「スター」で配信中。(写真=木村哲夫 ヘアメイク/AZUMA(M-rep by MONDO artist-group) スタイリング/土屋シドウ)

 スタイル抜群でハンサムな千両役者の阿部寛さん。そんな彼が醸す哀愁は、なぜこうも人を惹きつけるのか。ディズニープラス「スター」で配信が始まったドラマ「すべて忘れてしまうから」で演じるのは、漫然と小説を書き続けるミステリー作家、“M”。失踪した恋人を捜すうち、彼女の秘密に気づいていく……というストーリーにからめ、人間関係や人生観について含蓄に富んだ話の数々がこぼれた。

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──日常を描く作品に出るのは久しぶりとのことですが、新しい発見は?

 普通のドラマだったらいらないような台詞がたくさん書かれているということが既に新しかった。何げない台詞と、何げない掛け合いばかりで。

 それに僕が演じた人物は、はっきりした生き方とかポリシーを持っている人間ではないんです。流されるまま生きていて。ここ最近は、(ドラマ)「DCU」とか「ドラゴン桜」とか、はっきりした強い人間を演じることが多かったから、監督の世界観をつかむのは楽しい作業でした。

 ゴールデンの連続ドラマは、ある程度ストーリーの展開が見えてないと、その時間帯に視聴してくださる方がついてこられない。でも今回はそういうことではない舞台、ディズニープラスで、配信で、っていうことだから、それはもう自分たちのこだわりを通すという面で、贅沢に作らせていただいてますよ。せっかくやらせてもらうからには、ハードルは高いほうがいいと思ってました。

──歌手のCharaさんとの共演も話題です。

 CharaさんはCharaさんの世界、役者さんでは出せない世界観があって、その方と一緒にやれるっていうのは刺激になりました。本来僕がやるナレーションをCharaさんがやってくださったのも面白い試みだと思います。当たり前ではないドラマになるわけですよ。

 本当に気さくな方でしたね。全然壁とか作らないし、最初はその不思議さにちょっとびっくりしましたけど(笑)、楽しかった。

──今作のテーマについて、「日常の小さな瞬間が人生を変えることもある」といった趣旨のコメントをされていましたね。

 いいこと言いますね(笑)。小さくて覚えてないかもしれないけど、たぶんその連続だと思うんですよ。僕の転機で言うと……。26、27歳くらいの不遇の時代、パチンコをやってるときに、「なんで俺、誰とも会わずにずっとここで時間使ってるんだろうな」って気づいた瞬間とかね(笑)。「あれ? この時間、飲みにでも行けばどれだけいろんな人に会えて新しいものを発見できるだろう」って、あるとき思ったんです。

 パチンコって楽しいから夢中になるじゃないですか。で、散々やったら突然降りてきた(笑)。長い時間やってなければ気づかなかったかもしれない。その瞬間が僕の人生を小さく変えた。だから無駄なことなんてないんです。

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