(週刊朝日2022年2月18日号より)
(週刊朝日2022年2月18日号より)

 そこで裏で動いたのが、自民の亀井静香。村山の側近、野坂浩賢を口説き落としたのね。なぜか。亀井はかつて、野坂の選挙地盤である鳥取県で県警の警務部長をしていて、野坂に非常に大きな“貸し”があった。だから亀井が「村山首相でいきたい」と言うと、野坂は断れない。村山はいやいや、総理になった。

 当然ながら村山内閣は日米同盟を認め、自衛隊を認め、韓国も認める。やがて阪神・淡路大震災が起きた。このとき、社会党出身の村山だから、現地への自衛隊投入が遅れるわけ。もともと自衛隊反対だからね。被害が大きくなり、村山内閣もガタガタになる。失敗だった。

 振り返ると、細川、羽田、村山とみんな“野心”がなかったね。

 細川内閣に対しては、政治主導になるという期待感がものすごくあった。小沢が強力に推し進めようとしていたからね。

 せっかくできたのだから、選挙制度を変える。それから、非常に悪化していた財政も再建させる。この二つを実行してほしい、と細川に伝えたことがある。

 彼は「よくわかりました」と語った。でもね、はっきり言って、あまり意欲は感じられなかった。

 権力者になる人間は、「権力者になりたい」という気持ちがあるかどうか。細川には感じられなかった。非常に真面目でいい男。能力もある。しかし、そういう野心があんまりない。品があるけど、野心がない。

 野心というのは、単純に言えば、部下を抑えつけておくことね。難しいの。本当はいいことではないけれど、それがないとやっぱりね、組織を統率できない。8党派のトップに就いた細川には皮肉にも、仕切る力がなかった。真面目すぎたんだね。

 自民党の国会議員ならね、誰もがね、できれば総理になりたいとは思っているはず。それには権力者として仕切る力が備わっていないといけない。難しいけれど、やっぱり田中角栄以来、中曽根康弘なり、小泉純一郎なり、安倍晋三なり、野心があった。

 羽田も、非常に正直で真面目だけど、その意味ではあんまり野心がない。

 実は付き合いは非常に深くてね、羽田の地元の長野県にも何度か行った。(自民を離党してつくった)新生党の党首時代、地元の有権者らを訪ねて歩くとき、同行した思い出もある。

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