2011年の東日本大震災による津波で壊滅的な被害を受けた福島県浪江町。防護服を着た警察官らによる捜索が続いていた=同年4月25日
2011年の東日本大震災による津波で壊滅的な被害を受けた福島県浪江町。防護服を着た警察官らによる捜索が続いていた=同年4月25日

 869年に日本海溝沖で発生した「貞観地震」については、2011年3月に東日本大震災が発生する以前に、大きな津波が来たことを宍倉氏らの調査チームは発見していた。そのため、東日本大震災以降、過去の巨大地震を調査する動きが増え、今回の房総半島沖での未知の震源地の発見につながった。

 今回の産総研らの調査では、約300年前に発生した巨大津波の痕跡も発見されている。

 実は、房総半島の北端に位置する千葉県銚子市でも、同様の調査結果が出ているという。東北学院大や東北大の調査によると、銚子市では沿岸の一部で津波の高さが約17メートルに達していた。波が陸をかけあがる「遡上(そじょう)高」は20メートルに達した可能性があると分析している。

 こういった研究成果が次々と出てきたことで、茨城県東海村の日本原子力発電・東海第二原発が対応に追われている。東海第二原発は、房総半島を北上した茨城県沿岸に位置するが、東日本大震災のときには5.4メートルの津波が襲い、6.1メートルの高さの防潮壁を危うく超えそうになった。

 11年以降、15メートルの津波にも耐えられるように防潮壁を強化したため、房総半島沖の巨大津波について、原子力規制委員会は「施設の安全機能に影響を及ぼさない」との判断を下した。だが、「引き続き、研究動向に注視し、情報収集を行う」(同)との見解も示している。

 房総半島沖の巨大地震に、どう対応すればいいのか。前出の宍倉氏はこう話す。

「房総半島沖の津波は、数百年に一度のペースで発生しており、前回からすでに300年以上が経過しています。津波が発生した場合、どのような影響を与えるのかについて、具体的にシミュレーションし、警戒する段階に入っています」

 房総半島沖が震源でも、東京の都心部に致命的な打撃を与える可能性もある。地震による堤防破壊で洪水が起こる「地震洪水」だ。水害対策に詳しいリバーフロント研究所の土屋信行・技術審議役は、こう警告する。

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