自民党総裁室の机と椅子。9月29日にこの部屋の新しい主が決まる (c)朝日新聞社
自民党総裁室の机と椅子。9月29日にこの部屋の新しい主が決まる (c)朝日新聞社

 自民党総裁選の風物詩といえば、派閥による多数派工作だ。それが今回は様変わりしている。

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 9月10日には、自民党の若手・中堅議員約90人が立ち上げた「党風一新の会」の設立総会が開かれ、「党改革を通じた政治改革の断行」などを求める提言をまとめた。呼びかけ人の一人である山田賢司衆院議員は言う。

「私たちの動きに『選挙に弱い若手が勝てる顔にしてほしいと考えているだけ』と言う人がいますが、まったく違います。これまでの総裁選は、我々の知らないところで物事が決まってきた。徹底した政策論争を経て、派閥に縛られることなく新しい総裁を選ぼうということです」

 派閥の縛りを嫌う若手・中堅議員の反発もあり、今回の総裁選では自主投票を選ぶ派閥が増えると思われる。党風一新の会も、特定の候補者の推薦はせず、あくまで政策論争を通じた国民へのメッセージ発信を求めている。

 そもそも自民党の派閥とは何か。田中角栄ら、派閥政治全盛時代の自民党を取材した政治ジャーナリストの田中良紹氏は言う。

「もともと自民党は、総理候補を会長とする派閥が複数集まった連立政権のようなもの。各派閥に学者や官僚がブレーンについて政策を競い、それが権力闘争に発展していきました」

 派閥のボスはカネを集め、首相に重要人事の推薦名簿を出す。それを子分となる議員に配分することで、求心力を高めてきた。

 ただ、1996年に小選挙区制が始まってから変化がおとずれた。選挙の公認権や選挙資金の配分も、官邸や党幹事長が強い権限を持つようになった。また、2001年に小泉純一郎氏が「脱派閥」を訴えて首相に就任したことで、派閥が出す推薦名簿も首相に採用されにくくなった。

 それでも派閥政治が消えたわけではない。

「自民党は保守からリベラルまで様々な人がいて、派閥間の権力闘争で疑似政権交代をしてきた。今回の総裁選の背景にも、菅義偉首相・二階俊博幹事長vs.安倍晋三前首相・麻生太郎財務相という構図があります」(田中氏)

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