安倍政治を色濃く継承しようとする姿勢は、「サナエノミクス」からも見て取れる。名称もさることながら、その内容は安倍氏が掲げた「アベノミクス」路線を引き継ぐものだからだ。グローバル・エコノミストの斎藤満さんは「『アベノミクス』の焼き直しにすぎない」と批判する。

「日銀が20年間も緩和策を続けてきたのに物価が一向に上向かないことをみてもわかるように、緩和策頼みの経済対策に限界があるのは明らかです。財政出動は、今のような危機的状況では必要なのは確かです。だけど、その使い道に問題がある。大規模な予算が一部の大企業や利権に還流するような使われ方をしている現状では、安倍前政権の延長線上にあるような政府に任せていいのか不安です。そもそも、失敗とも言えるアベノミクスを引き継ぐことに反発しか覚えません」

 一方、国のトップ候補として女性が出てきたという点においては歓迎する向きもある。18年に「政治分野における男女共同参画の推進に関する法律」が施行され、安倍氏自身が第2次内閣時に「女性活躍」をうたってアピールするなど、かねて政界も男性中心社会からの脱却を求められているからだ。

 超党派の「政治分野における女性の参画と活躍を推進する議員連盟」会長の中川正春元文部科学相はこう話す。

「高市さんが総裁選に挑戦できることは喜ばしい。これまでは女性首相という選択肢すらなかった。選挙の現場を見ると、特に地方議会ではここ10年ほどで、女性に期待するという機運が高まっていると感じる。これまでは選挙に携わる者や有権者からあまりにも否定的に見られていたのが、肯定的に変わってきた。そうした機運が中央にも波及してきたのが今回の高市さん出馬の背景にあるのでは」

(本誌・秦正理、池田正史)

週刊朝日  2021年9月24日号より抜粋

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