「自死を選んだからといって、その人のすべての印象が悲しみで埋め尽くされるわけではありません。振り返ってみても、むしろ笑いあったことや楽しかったことのほうが、私の中に強く残っています。彼を知る友人たちと話す中でも、そうした温かさの印象が揺らぐことはありませんでした」
本書は、あさのさんが作品配信サイト「note」に発表した文章が元となっている。ネットで大きな反響を呼ぶ中、知人たちから「実は自分も死のうと思ったことがあった」「うつ病を患っていた経験があった」と告白を受けたという。
大切な人が亡くなったとき、それを私たちはどう受け止めるべきだろうか。本書には、そのヒントが詰まっているからこそ、読者の共感を得てきたといえる。(若林良)
※週刊朝日 2021年8月6日号