諦めかけて歩き始めると、宇土櫓という建物の前に出た。「おー!」。3人で歓声。「ここは踏ん張って壊れなかったんですよね」と案内係のおじさんが話し掛けてきた。なるほど。3人で記念撮影。加藤神社に行き、巫女さんから節分豆を「たくさんどうぞ」と頂いた。豆をつまみながら夜の部へ。今度は陽気なお客さん。ありがとうございます。打ち上げも出来ないので、ホテルの部屋でふう丈の恩人・馬肉料理『上妻亭』さんから御差し入れ頂いた米焼酎をひっかけていい気持ちで就寝。

 朝、空港へ向かいながら「『誉の陣太鼓』ってお菓子、お好きですか?」とふう丈。餡子のなかに求肥の入った太鼓型のお菓子だ。「ふつうかな」「空港に『陣太鼓ソフト』ってのがあってこれがバツグンにうまかです!」。『陣太鼓ソフト』、めちゃくちゃ美味い。おかわりしようとしたら「おなか冷えますよ!」。2人から止められた。これから本来たら必ず食べよう。

 ちっちゃないいことが後半立て続けにあった熊本の旅。東京に帰ったらまた「三寒」かな。そのうち春になるなら仕方ない。また行くよ、熊本。

春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/1978年、千葉県生まれ。落語家。2001年、日本大学芸術学部卒業後、春風亭一朝に入門。YouTube 「春風亭一之輔チャンネル」ぜひご覧ください! アーカイブもいろいろあります

週刊朝日  2021年2月26日号

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春風亭一之輔

春風亭一之輔

春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/落語家。1978年、千葉県生まれ。得意ネタは初天神、粗忽の釘、笠碁、欠伸指南など。趣味は程をわきまえた飲酒、映画・芝居鑑賞、徒歩による散策、喫茶店めぐり、洗濯。この連載をまとめたエッセー集『いちのすけのまくら』『まくらが来りて笛を吹く』『まくらの森の満開の下』(朝日新聞出版)が絶賛発売中。ぜひ!

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