アニメ映画「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」の上映初日の映画館前では、写真を撮る人の姿も見られた(c)朝日新聞社
アニメ映画「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」の上映初日の映画館前では、写真を撮る人の姿も見られた(c)朝日新聞社
「鬼滅の刃」上映初日に映画館の前で並ぶ人たち(c)朝日新聞社
「鬼滅の刃」上映初日に映画館の前で並ぶ人たち(c)朝日新聞社

 新型コロナウイルスの感染拡大は、映画業界に大きな影響を与えた。今春には外出自粛による映画館や劇場の休館が続き、今年8月までの中間決算では、松竹が94億円の最終赤字となったほか、東宝も純利益が83.4%減と大幅な減益となった。

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 そんな状況下で、救世主のごとく姿を表したのが、10月16日に公開されたアニメ映画「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」だ。

 人気漫画の劇場版の公開によって公開初日から多くのファンが映画館に詰め掛け、10日間で興行収入が100億円を突破。早くも興行収入の日本記録更新が期待されている。SNS上では、『鬼滅の刃』の上映回数の多さに注目が集まり、上映スケジュールを見て「時刻表」と呼ぶ声も上がった。

 また、『鬼滅の刃』公開に合わせる形で、多くの映画館は座席の間隔を開けない「全席解禁」を始めた。ところが、業界関係者の中には「逆風が吹いた」と話す人もいる。映画館の定番であるポップコーンをはじめとした、サイドスナックを販売する飲食業者だ。

 全国興行生活衛生同業組合連合会(全興連)が2020年9月に改訂した新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドラインによると、「収容率100%にする場合は、飛沫感染を防止するためにマスクを外す懸念のある食事をさせないように努める」とあり、映画館での食事の自粛を求めている。全席解禁のタイミングは各映画館に委ねられており、9月のガイドライン改訂時点では、各シネコンの対応は分かれていた。

 それが全席解禁の事前通知が急に行われ、突然の決定に飲食業者が混乱しているというのだ。

 映画館へのポップコーン販売を行っている、ある飲食会社の社長はこう話す。

「全興連のガイドラインは確認しており、全席解禁による食事NGがいずれくることは予測していました。しかし、突如として食事NGになってしまうと、ロスも多くなりますし、その分、赤字は膨らんでいきます。いきなり厳しい状況に立たされてしまった感覚です。我々のような飲食業者にとって、『鬼滅の刃』が公開される10月は勝負の月で、コロナで低調だった飲食販売が、少しでも復調してくれれば……と期待していました。このままの状況が続くのであれば、潰れてしまう同業者も出てくる」

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リスク大きい「全席解禁」にシネコンも苦慮