監督 ロドリゴ・ソロゴイェン/23日からシネスイッチ銀座ほか全国公開/129分(c)Manolo Pavon
監督 ロドリゴ・ソロゴイェン/23日からシネスイッチ銀座ほか全国公開/129分(c)Manolo Pavon
監督 ロドリゴ・ソロゴイェン/23日からシネスイッチ銀座ほか全国公開/129分(c)Manolo Pavon
監督 ロドリゴ・ソロゴイェン/23日からシネスイッチ銀座ほか全国公開/129分(c)Manolo Pavon

 2019年のアカデミー賞短編実写映画賞にノミネートされたソロゴイェン監督の15分の短編「Madre」。10月23日から全国公開が始まる「おもかげ」は短編の“その後”を描いた監督の長編5作目。ヴェネチア国際映画祭オリゾンティ部門で女優賞を受賞した。

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 スペイン・マドリードに住むエレナ(マルタ・ニエト)には離婚した元夫との間に6歳になる息子がいる。ある日、元夫と旅行中の息子から「パパが帰ってこない」という電話を受ける。人気のないフランスの海辺からかかってきたその電話が、息子の声を聞いた最後だった──。

 10年後、エレナはその海辺のレストランで雇われ店長として働いていた。忙しく働き、いつものように浜辺を散歩する単調な暮らし。そんなあるとき、息子の面影を残したフランス人の少年ジャン(ジュール・ポリエ)と出会う。エレナを慕うジャンは頻繁に彼女の元を訪れるようになる。しかし2人の関係は、周囲に混乱ととまどいをもたらしていくのだった……。

 本作に対する映画評論家らの意見は?(★4つで満点)

■渡辺祥子(映画評論家)
評価:★★★
息子を失った母の納得がいかないまま鬱々と生きる姿を差し出し、これからどうなる?と好奇心を刺激する。冷えた表情の女と透明感のある美しい海辺。喪失感と再生への希望。そう、そこには希望が生まれていると信じたい。

■大場正明(映画評論家)
評価:★★★★
導入部の一刻を争うサスペンスと、10年後の感情が複雑に揺れる三角関係のドラマ。ジャンルががらりと変わるように見えながら、携帯が持つ意味に着目すると、それが見事に繋がっていく。よく考えられた構成が素晴らしい。

■LiLiCo(映画コメンテーター)
評価:★★★★
短編から生まれた傑作! もしや彼は息子? でも母親としての感情だけではない。ミステリーでありながら、母親でありたいひとりの女性の再生を見つめられて、この後の二人の人生も妄想しました。この時期に観たい一本!

■わたなべりんたろう(映画ライター)
評価:★★★
元になった短編は緊迫感が溢れていてホラーに近いスリラーだったが、長編化した今作はドラマに近いスリラーに仕上がっている。素晴らしい撮影と主演女優の表情により独特の空間を生みだし秀逸だが、若干冗長な点もある。

(構成/長沢明[+code])

週刊朝日  2020年10月30日号