レッスンのときにはいつもピアノを弾いて、「こういう曲ですよ」と教えてくれたという。

「京平先生は、常に洋楽を意識し、音楽の勉強をされていた印象があります。洗練された雰囲気は、東京っ子だなぁという感じもありました(笑)。先生の曲は難しいけれど、歌いやすい。歌っているだけで自然と楽しくなってくる曲が多い印象があります」

 その後、偶然出会っても、昔と変わらない接し方だったという。

「3、4年前にもやはり食事の場でばったり会いました。そのときにも『小林クン、元気にしてる?』と同じように。それがお会いした最後になります」

 前出の山崎さんは、

「これからの日本の音楽は、“筒美京平のいない時代”を進まねばならなくなります」と語った。

 それでも、筒美さんが生み出したたくさんのメロディーは、この先も色あせることなく歌い、聞き継がれていくだろう。
(本誌・太田サトル)

*週刊朝日10月30日号に掲載