取材後、すでに食事をしていたヒョンビンが、食事を中断してわざわざ見送りに来てくれた。すでにアジアで大スターだったにもかかわらず、謙虚で礼儀正しくおごるところが少しもない。その姿は今も、これからも、きっと忘れられない。

「愛の不時着」でいま、韓流ブームに沸いている。ヒョンビン沼にハマった人なら理解していただけると思うが、韓流ドラマの楽しみの一つは心ときめく“マイプリンス”に出会えることだ。

「韓流四天王(ペ・ヨンジュン、イ・ビョンホン、チャン・ドンゴン、ウォンビン)」時代から数多くの韓流スターを取材してきた。今振り返っても、なんて良い時代にライターになったのだろうと神様に感謝したくなる。何しろ会う人会う人がイケメンなのだ。どんなに髪を振り乱し青筋立てて締め切りに追われていても心が潤う。女を取り戻せる。

 初めて韓流スターに取材したのは、映画「私の頭の中の消しゴム」で一躍日本でも注目されたチョン・ウソン(47)。彼がまだ20代前半で、初の映画「KUMIHO/千年愛」(1994年)のプロモーションで来日。当時は韓流のはの字もなく、筆者もノーマーク。187センチという高身長とあどけない笑顔に、「韓国にもこんなかっこいいスターがいるんだ」と幸せな気持ちになったことを覚えている。

 ヨン様人気で韓流の第1次ブームが起こった当時、最初に取材をしたのは、今は48歳になったチャン・ドンゴン。言わずと知れた韓国の大スター。女性誌の編集者から「韓国ですごい人気のスターらしいけど取材します?」と尋ねられ、「人気があるならやっておこうか」という軽いノリで取材に向かったら……。思い切り、どストライク。私が韓流スターに目を開かれたのは、チャン・ドンゴンとの出会いがあったからだ。作品で見せる彼の「目力」は半端ないが、ご本人はいつも穏やか。単独取材は3度しているが、彼と話すといつも優しい気持ちになれる。

 一度「腹を立てることはないのですか」と聞いたら、「年に2、3回はあります」と言うから人間ではない。韓国の芸能界で彼の悪口を言う人はいないというが、その言葉を100%信じられるほど、できた人なのだ。

 アラフォーと言えば、韓流四天王の一人、ウォンビン(42)も挙げておきたい。「花美男」でチャン・グンソクを思い出す人も多いだろうが、一連の韓流ブームを振り返れば、ウォンビンこそ元祖「花美男」だ。映画「ブラザーフッド」ではチャン・ドンゴンの弟役で見る者を泣かせた。映画「母なる証明」でその演技力が絶賛され、韓国版「レオン」と言われた
「アジョシ」では、元特殊部隊要員テシクを演じて「イケメン俳優」から「演技派俳優」への脱皮を果たす。この映画を見たらウォンビンの圧倒的なアクションと身重の妻を亡くしていた男の哀切に震えるはずだ。

 間近で取材したウォンビンには緊張を強いられた。この点で他の韓流スターとは一線を画す。調子の良さは一つもない。無口、物静か。だからこそ、こちらの話に彼がクスッと笑ってくれると天にも昇るような気持ちになれた。今後の方向性を尋ねると、

「これからも真実の愛を表現するような役を演じていきたい」

「アジョシ」以来出演作がないのは多分、そのような作品に巡り合えていないからなのだろう。

次のページ
スターのオーラとは?