東尾修
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川上哲治氏の生誕100年記念試合として、川上氏の背番号「16」をつける巨人の菅野智之=2020年9月1日、東京ドーム (c)朝日新聞社
川上哲治氏の生誕100年記念試合として、川上氏の背番号「16」をつける巨人の菅野智之=2020年9月1日、東京ドーム (c)朝日新聞社

 西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、首位を独走する巨人の優位性について語る。

【写真】川上哲治氏の生誕100年記念試合として背番号「16」をつける巨人の菅野智之

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 巨人の原辰徳監督が9月9日の中日戦で勝利し、監督通算勝利数で川上哲治氏の1066勝に並んだ。2、3年で野球が変わる時代。3期監督をやり、選手の気質も野球も変わっていく中で、常に新しいチャレンジを自らに課さなければ、いかに戦力が整う巨人であっても、これだけの勝利数を重ねられるものではない。

 沢村拓一をロッテにトレードで放出した。ドラフト1位の選手で、しかも、球威が衰えたわけではない。そんな選手を放出してまでも、左のパワーヒッターである香月一也を補強した。フロントだけで沢村放出の決断ができるわけがない。原辰徳監督がチーム強化の中長期的ビジョンの中で、許可を出したのだろう。ロッテと巨人のどちらから持ちかけたかはわからないが、こういったトレードが成功すれば、各球団もどんどん入れ替えが進む。その沢村も移籍初戦で3者連続三振。表情も生き生きとしていた。

 シーズンも中盤を越えて残り50試合前後となった。セ・リーグは巨人の絶対的優位は揺るがない。下位チームの中で10連勝を複数回するような状況が生まれないかぎり、逆転は難しい。菅野智之という絶対的な存在がいるかぎり、巨人は大型連敗の心配もない。

 コロナ禍で、6連戦が続く日程となった。このコラムでも指摘したが、救援陣をどうやって回すか、いかに疲労を残さずにシーズンを通じてマネジメントできるかが焦点とみていた。逆に言えば、完投能力のある先発投手が一人でも多くいる球団は強い。エースであるならば、試合の勝敗をその投手に託せる。

 特に今年は月曜日が移動日で火曜日から6連戦となることが多い。火曜日の先発投手が長い回を投げ切れれば、救援投手は月曜日と合わせて2日間休める。これは大きいよね。そういった意味で、8日の火曜日に投げ合った巨人の菅野と、中日の大野雄大には拍手を送りたい。負けた大野も6試合連続完投だ。それがどれだけ救援投手の疲労を軽減することになるか。残念ながら、中日は上位にはいないが、大野の貢献度は計り知れない。

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東尾修

東尾修

東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

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