こういった派閥意識は、世間の「対立構図を好む傾向」と共に、「二兎追う者は一兎も得ず」「贅沢を言うとバチが当たる」的な日本特有の躾や美徳の影響も多分にあるのではないでしょうか。多くの人たちが、事ある毎に「どっちかひとつだけよ!」と親に言われて育ってきたはずです。「おにぎりかサンドイッチか」「そばかうどんか」「タレか塩か」「和式か洋式か」といったように、私たちは常日頃から二択を迫られて暮らしています。それが癖づいてしまっているのかもしれません。
たまにエゴサをしていると、「マツコよりミッツ派!」と呟いている人に出くわします。敢えてマイナーな方を支持するのもまた、昔からよくある個性の主張方法です。「ミッツ派」であることが、その人にとっての「譲れないアイデンティティ」なのは嬉しいですが、やはりちょっと複雑です。
※週刊朝日 2020年9月25日号
■ミッツ・マングローブ/1975年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て2000年にドラァグクイーンとしてデビュー。現在「スポーツ酒場~語り亭~」「5時に夢中!」などのテレビ番組に出演中。音楽ユニット「星屑スキャット」としても活動する