岩手県の達増拓也知事 (c)朝日新聞社
岩手県の達増拓也知事 (c)朝日新聞社
鳥取県の平井伸治知事 (c)朝日新聞社
鳥取県の平井伸治知事 (c)朝日新聞社

 新型コロナウイルスの影響が国内各地で広がるなか、「県民性」をうかがわせるようなコロナ対策や動きが出ている。編集部はこうした取り組みなどをさぐろうと、全都道府県にアンケートを実施した。

【アンケート結果】独自の対策や県民性をうかがわせる取り組みを紹介!

 感染者数「ゼロ」が続いていた岩手県内。ここでもテレビのニュースに日々登場したのがマスク姿の小池百合子・東京都知事だった。感染が広がる首都のトップが、画面を通じて都民に外出自粛などをくり返し呼びかけた。

「実家の両親はこれを岩手に居ながらにして忠実に守ろうとしていた」。こう話すのは都内のIT系企業に勤める30代の女性だ。両親は、娘が住んでいるとはいえ“対岸の火事”とはせず、危機感を高めていた。

 そんな岩手で初の感染者が出たのは7月29日。厚生労働省のまとめ(8月11日時点、以下同様)では、県内の感染者数7人、全国の5万人近い数と比べても圧倒的に少ない。

「県内第1号は出たものの、市1号、地域1号にはなりたくないという思いがある。東京から来る人に警戒感は依然として強い」(先の女性)。お盆になると帰省していたが、今年は親から「帰ってこないほうがいい」と断られた。

 アンケートでも、岩手は「まじめで慎重な県民性」を挙げた。県民性研究の第一人者、矢野新一さんも「辛抱強く、どんな苦境でも耐え忍ぶ気質が感染を防いだのでしょう」とみる。豪雪地帯では昔から家にこもって読書をしたり、絵を描いたりする人が多い。コロナ禍で耐え忍ぶ気質が力を発揮した。

 県も2月7日に感染症対策専門委員会を設置するなど、地味ながらもコツコツと予防を図った。県民から「岩手らしく取り組んでいる」と達増拓也知事も評価されている。

 鳥取県は感染者21人と全国2番目に少ない。「まじめ」「きちょうめん」とされる県民性にあって、意外にも「県民の意識に残りやすいようダジャレ」が貢献したようだ。新型コロナ克服3カ条と題した「人と人 間(あいだ)が愛だ」「三つもの密だとミスだ」「幸せは予防で呼ぼう」といった平井伸治知事による“オヤジギャグ”。まじめさゆえに、より響いたのかもしれない。

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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松岡かすみ

松岡かすみ

松岡かすみ(まつおか・かすみ) 1986年、高知県生まれ。同志社大学文学部卒業。PR会社、宣伝会議を経て、2015年より「週刊朝日」編集部記者。2021年からフリーランス記者として、雑誌や書籍、ウェブメディアなどの分野で活動。

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