逃走の3、4日後、擁壁にいると通報があった。

「警察と消防レスキュー隊が捕獲しようとしたんですが、飛び回るヤギについていけませんでした。その後、市役所の人が『釣り上げる方法がある』と教えてくれて、竿とテグスを買っていざやろうとした頃、テレビやネットで話題になりました。ヤギを傷つけるような方法を取るのは残酷だという意見も出るだろうから、止めました」

 結局、手を出せないままの状態が現在まで続いているという。佐倉市は7月15日、公式サイトに次のような見解を掲載している。

「飼い主と市による捕獲作戦の実施予定はありませんが、飼い主は餌による誘導やワナによる安全な方法での捕獲を検討し実施しており、市は飼い主からの相談に応じて専門機関等に知見を求めるなど、飼い主の捕獲活動のサポートをしています。今後は、ヤギのいる場所が京成電鉄の管理地であるため、飼い主、市、京成電鉄の三者で対応策を協議してまいります」

 ところがこの間、複数の報道がなされたことも影響したのか、なぜかヤギの人気が急上昇。なんとTシャツやトートバッグなどのオリジナルグッズも販売され始めた。

 市内の「そばカフェ301」渡辺和崇店長が、自ら風車、電車、ヤギをデザインした10点、市内の画家MyToshiさんとのコラボグッズ5点をオンライン限定で販売。売り上げの一部を「ヤギ対策費捻出」として市に寄付するという。

「2カ月前、常連のお客さんから話を聞き、準備を始めました。コロナ禍の中、久々の明るい話題として地域活性化につなげようと思ったからです。1週間に100点くらいオーダーをいただいています」(渡辺さん)

 ヤギ対策費と呼ぶのは、捕獲だけではなく、ヤギの安全対策にも使って欲しいとの願いからだ。

 飼い主の男性は渡辺さんのグッズから触発され、ヤギの名を「ポニョ」と命名。「逃がした責任は私にあります」ときっぱり言い切ったうえで、こう語った。

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「あの場所で寿命をまっとうしてもらうのもいい」