瀬戸内寂聴「もう先のない私は…」横尾忠則との旅を振り返る (2/3) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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瀬戸内寂聴「もう先のない私は…」横尾忠則との旅を振り返る

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瀬戸内寂聴(せとうち・じゃくちょう)/1922年、徳島市生まれ。73年、平泉・中尊寺で得度。『場所』で野間文芸賞。著書多数。『源氏物語』を現代語訳。2006年文化勲章。17年度朝日賞。

瀬戸内寂聴(せとうち・じゃくちょう)/1922年、徳島市生まれ。73年、平泉・中尊寺で得度。『場所』で野間文芸賞。著書多数。『源氏物語』を現代語訳。2006年文化勲章。17年度朝日賞。

横尾忠則(よこお・ただのり)/1936年、兵庫県西脇市生まれ。ニューヨーク近代美術館をはじめ国内外の美術館で個展開催。小説『ぶるうらんど』で泉鏡花文学賞。2011年度朝日賞。15年世界文化賞。(写真=横尾忠則さん提供)

横尾忠則(よこお・ただのり)/1936年、兵庫県西脇市生まれ。ニューヨーク近代美術館をはじめ国内外の美術館で個展開催。小説『ぶるうらんど』で泉鏡花文学賞。2011年度朝日賞。15年世界文化賞。(写真=横尾忠則さん提供)

 温泉地に行くと僕はきまってソフトクリームを食べたくなくても食べるクセがついていてセトウチさんと並んで大きい口を開けてソフトクリームを食べている写真は僕の旅行記『温泉主義』(新潮社=絶版)に掲載されています。甘党の僕は朝食のあと、ぜんざいが食べたいと、女将にリクエストすると本当に作ってくれましたよね。「ヘェーッ! 朝からぜんざい食べるの?」とびっくりした顔のセトウチさんも、結局食べました。セトウチさんが、女将(おかみ)さんや副支配人や仲居さんが皆んな美人だと言ったもんだから、きっとぜんざいを作ってくれたんですよ。

 帰りの電車の中で買ってきたおはぎをセトウチさんに勧(すす)めたが、「ソフトクリームのあとぜんざいで、またおはぎーッ!」と言って「ギャーッ!」と叫んだままで、結局僕ひとりが食べることになったんです。そんな僕の様子を見た、はす向かいの知らない夫婦も同じ包装紙を破いて、おはぎを食べ始めました。「見てたら急に食べたくなりましてんや」とお土産のはずのおはぎを幸せそうな顔をして食べ始めました。憶(おぼ)えていらっしゃいますか?

 帰京した次の日、セトウチさんから電話があって、「食べ過ぎて目方が増えるやら血糖値が上がるやらで……」と。あの時のセトウチさんの年齢が今の僕の年齢だと思うと、何んだか感無量ですね。あれから15年、もう一度、同じ旅をしたいですね。夢ですかね。では、いい夢を。

■瀬戸内寂聴「『城の崎』に思う志賀直哉名文でなく、ヨコオ画伯の画」

 月日のたつのが速いこと!

 ついこの間始(はじま)ったと思っていたのに、この文通が速くも三十回近くになっていますね。おかげで、忘れていた昔のことを、あれこれ想(おも)いださせてもらい、気持(きもち)が若返っています。城崎温泉のことは、私もよく、想いだしては、愉(たの)しくなっていましたよ。

 小説の神様とあがめられている大文豪の、志賀直哉大先生の「城の崎にて」という名文の中に、この温泉のことが書かれているので、志賀ファンにとっては、城崎温泉は、憧れの尊い名所なのでした。


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