前半、勝ち越しのトライを決める稲垣(手前)(c)朝日新聞社
前半、勝ち越しのトライを決める稲垣(手前)(c)朝日新聞社

 13日のラグビー・ワールドカップ(W杯)でスコットランドを28―21で破り、開幕4連勝で史上初の8強入りを決めた日本。その躍進を支えたのは、地味ながら最前線で体を張り続けている背番号1番から8番をつけるフォワード(FW)陣だという声は多い。

「日本の弱点はパワーや体重で他国に劣るFWだと思っていた。スピードのある松島(幸太朗)や福岡(堅樹)ら優れたバックス(BK)はいるが、いくらBKが良くてもFW戦のスクラムやラインアウトで後手に回れば、チャンスは回ってこない。それが優勝候補のアイルランドに対しても、フィジカルが強いサモアに対しても日本は負けていなかった。日本が成長を遂げているのは知っていたが、ここまでやるとは……」

 アイルランドのスポーツメディア「Pundit Arena」のショーン・マクマホン記者は、日本をそうたたえる。

 前回2015年のW杯イングランド大会に出場した元日本代表FWの畠山健介氏もこう語る。

「前回大会と比較してサイズが増したこともありますが、FWが強化されたことで相手にすれば相当攻略し難いチームになっている。誰が良い? もう全員です。FWはBKと違い、ユニットでの勝負。スクラムもラインアウトも一人でもサボれば、そこから崩れてしまいますから」

 特に際立っているのはスクラム。アイルランド戦では世界最強とされた相手FW陣に対し、マイボール・スクラムの成功率は100%(6本中6本成功)を記録した。サモア戦のラストプレーで奪った、ボーナスポイント獲得につながる4本目のトライは、相手陣地深い位置でのスクラムが起点だった。

 サモア戦後の日本のロッカールームでは、献身的にチームを支えた選手としてFWの木津悠輔が表彰された。

 木津はFW第1列右プロップの3番手で、今大会は一度も試合登録メンバー入りを果たしていないのになぜ? 聞けば、同じFW第1列フッカーのサブ、北出卓也とともに対戦相手のスクラムを徹底的に研究し、練習ではレギュラーの相手役を務めた。それが、試合に出場した選手にはいいシミュレーションとなったそうだ。

 日本代表の長谷川慎スクラムコーチは言う。
「彼らも試合に出たいはずだが、そういう気持ちを我慢して相手役をやってくれている。それが日本の強さにつながっている」

 縁の下の力持ち的なFW。さらにはその下で支えている選手たちのおかげで日本は躍進したのである。(栗原正夫)

※週刊朝日オンライン限定記事